変化観音の一尊で梵語名 Amoghapāśa (アモーガパーシャ)で アモーガ(不空・Aは否定詞)・バ―シャ,(
十一面観音と時期をほぼ同じくして出現する、信仰が中国と日本に概ね限定された十一面観音や千手観音と異なり、インドに於いてはヒンズー教のシヴァ神とイメージが重なり古くから信仰され多くの像が存在する、また密教の興隆と共に不空羂索観音の呪文(真言・陀羅尼 注5)は五百十四首の多義に亙り信仰された、依経となる経典は
この観音にもいろいろな呼び名があり、不空王・不空憤怒王・清浄蓮華明王などとも呼ばれ、失敗する事の無い投げ輪、魚網の意味を持つ、藤原一門の守り本尊であった事から、日本では天平時代から平安時代に相当数造像された、経典に拠れば「慈悲の索・一切の衆生が漏れる事なし」とされる様に大衆の煩悩を漏れなく慈悲の網を持って救済すると言う、即ちご利益は空しくなく、慈悲は羂索に於いて救い上げられる、ちなみに羂索とは古代インドにおける狩猟具である、羂索とは「
不空とは宇宙の外を言い、般若心経を引用すれば、「空」は大宇宙とすると「色」は諸物体とされる、色の集合が空であり、色すなわち空であり、空すなわち色である。
観音信仰が深まるにつれ人々はより大きなパワー(power)
無限の過去劫すなわち
日本では鹿皮の衣を着ているのは不空羂索観音に限定されるが、インドやネパールでは他の変化観音も鹿皮衣を着用している為にシンボルは羂索と言えよう。
春日大社・藤原一門は興福寺・南円堂の本尊として安置するなど本地仏すなわち守護佛とし占有した事から六観音の中では霊場は少ない、藤原一族以外からは多くの信仰を集めるには到らず平安中期を境に造像された事は無きに均しい。
密号を等引金剛と言い姿形として不空羂索呪経、不空羂索陀羅尼経」、不空羂索神変真言経」等の儀軌には多様に説かれており、白肉色で宝冠に化仏を置き三眼・一面(三面)二臂
・四臂 ・八臂 ・十八臂などが有る、胎蔵界曼荼羅観音院の場合は三面四臂であるが日本に於いては一面八臂・三眼で占められる、但しインドに於いて八臂像は存在せず四臂が多数である、日本の多くの臂は真手が合掌し二臂以下に羂索・
東大寺法華堂・興福寺南円堂・広隆寺講堂が著名で、十一面観音と混血とも考えられる観世音寺の十一面三眼八臂などが知られている、特に法華堂(三月堂)の本尊はわが国最古の不空羂索観音であり豪華な宝冠・化佛を持ち
真言 おん はんどまだら あぼきゃじゃやに そろ そろ そわか
注1, 藤原
不比等の子供達の系列から凄惨な確執を繰り返した後10世紀(藤原時代)には藤原
また藤原姓は橿原市高殿町付近の地名からともされる。
傍系に久我・醍醐・今出川・姉小路・山科・花山院・広幡・三条・西園寺・徳大寺・難波・飛鳥井・冷泉・坊城・日野・烏丸・大炊御門・中炊御門・観修寺等があり本来は全て藤原姓である。
五摂家による禁裏支配制度は後醍醐天皇の御世を除き明治維新まで継続した、1884年に華族令により廃止になり五摂家は華族筆頭として公爵位を授けられた。
注2, 縦長第三の眼は佛眼又は天眼と言い嘘や迷いを見抜く眼とされる、またシバ神の影響を受けた眼と言う説もある。
注3、六観音 ・聖観音 ・千手観音 ・十一面観音 ・如意輪観音 ・准胝観音 ・馬頭観音 が通例であるが、主に天台系に於いては准胝観音は仏眼仏母(一切仏眼大金剛吉祥一切仏母)に分類されるために不空羂索観音が入る。
注4、不空羂索観音を本尊とする寺は少ないが奈良市高畠町1365に「不空院」があり重要文化財指定を受けている。(下段●4番目参照)
注5、 代表的な呪文の四系統、・ダラニ(dhāraṇī)陀羅尼 ・フリダヤ(hrdaya)心呪 ・ヴィディヤー(Vidyā)明呪 ・マントラ(mantra)真言 を言うが他にも多くの系統がある。
主な不空羂索観音像 表内は国宝 ●印国指定重文
寺 名 |
仕 様 |
時 代 |
東大寺 (三月堂 ) |
脱活乾漆造漆箔 立像 362,1cm(宝冠88cm) 単面三眼八臂 |
天平時代 |
興福寺 (南円堂) |
木造漆箔 玉眼 坐像 341,5cm 康慶作 |
鎌倉時代 |
広隆寺 (霊宝舘) |
木造彩色 立像 313,6cm |
平安時代 |
●観世音寺(福岡県筑紫郡大宰府町)木造漆箔 立像 517,0cm 鎌倉時代 琳厳作 十一面三眼八臂
●大安寺 立像 木造彩色 189,9cm 天平時代
●唐招提寺 伝、獅子吼菩薩立像(不空羂索観音・三眼四臂) 木造 171,8cm
●唐招提寺 伝、衆宝王菩薩立像(不空羂索観音・三眼六臂) 木造 173.2cm
●法蓮寺(香川)坐像 立像 木造 89,1cm 平安時代
●不空院 坐像 木造 漆箔 玉眼 103,9cm 鎌倉時代 奈良市高畑町1365
●東鳴川観音講(奈良) 坐像 木造 90,6cm 平安時代
泉涌寺公式サイト(法音院不空羂索観音)からの転写です。
最終加筆日 2004年6月28日 2009年3月10日 2018年3月21日 2018年11月3日 2020年4月5日 6月11日補足