般若菩薩

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大乗仏教の初期に「般若経」を依経とされた様で、空の哲学や六波羅蜜の修行で般若波羅蜜多に至る事例を説いている。
胎蔵曼荼羅の持明院中央に存在し、梵経(ぼんきょう)を手にした女性尊で智恵を司る般若菩薩を配している、一説には毘盧遮那すなわち大日如来の妃を暗示している、般若経は「般若波羅蜜多」即ち空を説き、初期の大乗仏教の根幹経典であろう。
如来の智慧
(般若)を司り、仏法の働きを人格化した菩薩像である、数千点に及ぶ膨大な般若経の法と智を象徴化した姿を菩薩像に顕わした像、即ち大般若経を中心とした般若経典群の”般若波羅蜜多”を説く本尊である、般若とはあらゆる事例を瞬時に悟る智慧を言う、従って仏教に於いて般若の智慧は最高の悟りとされている。
従って般若波羅蜜多菩
とも言いう三世諸仏能生智母(さんぜしょぶつのうしょうちも)・般若佛母とも言われ、女性尊で佛教の信仰対象では多羅菩薩と共に代表的な女尊すなわち明妃菩薩である、一説には大日如来すなわち毘盧遮那仏の妃と言われる。
覚者は般若菩薩の智慧と福徳により覚りを開くとされる、般若すなわち瞬時に総てを覚る為の智慧の象徴とされている、仏像すなわち彫刻例は見られないが、密号を大慧金剛と言い胎蔵界曼荼羅の持明院の中尊を勤め、虚空蔵院にも般若佛母として不動明王降三世明王大威徳明王・勝三世明王を従えて存在する,曼荼羅とは本来行者が修行の一環として描くものであるが般若菩薩は己の修行の完成をイメージした姿とされる、即ち六波羅蜜の行の完成者が感得出来る、但し大日経に於いては般若菩薩の記述は無い、胎蔵生曼荼羅に指示されている場所は白檀曼荼羅に於いて阿闍梨の座す観想場所との記述がある。

般若とは梵語のpra
ñāプラジューニ pāramitā(バーラミターの音訳で、パーリ(pāli)語のバンニャーpaññāから来ている、漢訳を「慧」と言い特に「如」に至る為の智慧を言う、和訳では「悟りを開く為の見識」・「真実の智慧」「とされ覚りの母胎である、般若心経に於ける要諦的役割すなわち本尊的任務を担う菩薩である、一説には般若心経で著名な”羯諦(ぎゃーてい)、羯諦 波羅(はら)羯諦------の陀羅尼(呪文)は般若菩薩に奉げられたと言う説がある、空海は般若経典600巻の要諦説を否定し般若菩薩の真言とする、即ち「大般若菩薩の大心真言三摩地法門なり」と言う、また上座部では無漏(むろ)の智とか(へん)()parijñāが使われる様である。 
法の智慧をシンボル化した菩薩で般若経典の中尊的存在である、智慧は覚りの為の母体であり、般若心経を頂点とする大般若経など数千部にのぼるとされる般若経典に於ける本尊でもある、ちなみに
prañā Pāramitā般若波羅蜜)は女性名詞である,故に般若菩薩は諸仏の母と言える。       
胎蔵界曼荼羅以外は彫刻にも絵画にもあまり登場しない、顕教では十六善神を従えて「大般若会」の本尊として描かれている程度であるが、密教に於いては重要な存在で智慧・法のシンボル的存在とされる。
姿形としては甲冑や羯磨衣を着けるが、通常菩薩姿しており三眼・六波羅蜜を表す六臂で異なる印を結び一臂は白蓮華・梵篋・剣・経巻・梵匧等を持つ。
曼荼羅は砂曼荼羅が示すように修行僧が描くもので大日如来のレベルに到達を意識し即身成仏を果した本人が覚りの姿、即ち自身を描いたものとされている。
姿形として「陀羅尼集経」や胎蔵界曼荼羅の虚空蔵院は二臂像であり持明院では六臂像で三眼である、六臂は六波羅蜜すなわち布施・持戒・精進・禅定・智慧を著し、三眼すなわち第三番目の眼は真実を観る眼力を言う。
般若心経大本に関連すると考えられる明妃の般若派羅蜜多菩薩はインド、チベットなど後期密教で崇拝されている。
日本に於ける般若菩薩の代表例に
東京国立博物館の絹本着色 104.5:58.8 鎌倉時代が重要文化財指定を受けている、胎蔵界曼荼羅・持明院を参考にしたのか、三眼六臂で蓮華座に坐している。

真言  オン チシュリ シュロタビジャエイ ソワカ

1、十六善神 大般若経を守護する神で四天王を含む十六神で梵天帝釈天を含め十八善神とも言われる。
提頭頼宅(だいとら)善神(ぜんじん)(持国天)、毘盧勒(びるろく)叉善神(しゃぜんじん)(増長天)、摧伏(さいふく)毒害善神(どくがいぜんじん)増益善神(ぞうやきぜんじん)歓喜善神(かんきぜんしん)除一切障難善神(じょいっさいしょうなんぜんしん)抜除罪垢(ばつじょざいく)善神、吠室羅摩拏善神(ぶぇしらまぬぜんじん)(多聞天)、(のうにん)善神、離一切怖畏(りいっさいふい)善神、毘盧(びる)博叉(ばくしゃ)善神(広目天)、摂伏(しょうふく)諸魔(しょま)善神、救護一切(ごくいっさい)善神、獅子(しし)威猛(いもう)善神、能救(のうく)諸有(しょう)善神、勇猛心地(ゆうもうしんじ)善神を言い大般若会の本尊である釈迦三尊や般若菩薩に従う、この他に阿難、玄奘、深沙大将などを加える事がある。 

注2、般若(はんにゃ) 覚りのための智慧(見識)・あらゆる真実を見通す智慧を言い、梵語pra
ñā (プラジュニャー)  ・バーリ語バンニャー   漢訳は慧という。




2004126日、200525日、2005318日、20076月8日 2009215日、2013年12月20日、2018年10月3日 2020年3月17日 5月19日 2021年2月27日 2022年5月6日 9月25日加筆 

 

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