梵 鐘

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梵鐘に付いて 
通常つり鐘と呼ばれる梵鐘の多くは青銅の鋳造品
(銅を主体に小量の(すず)と亜鉛を混入)で「梵」とは梵語 brahman (ブラフマン)を音訳されたものである、brahman 即ちインド哲学に於けるタームで「宇宙に於ける最高原理」を意味する、清浄・神聖の意味をも併せ持つ。
当初は教団内の律を知らせる為の合図に使用された揵稚(けんち)と呼ばれた木版で中国に於いて銅製になり
梵鐘と銘々された、仏教伝来と時を同じくして請来された様であるが,木版製も喚鐘(かんしょう)として禅宗寺院や茶道等において合図に使われている、因みに梵鐘には大鐘(おおがね)(きょ)(げい)()(げい)洪鐘(こうしょう)等の別名がある。
鋳造品の鐘はサイズに依り梵鐘と半鐘・喚鐘に分類される、梵鐘は概ね鐘高5518寸)以上、口径7625寸)以上、重量375kg(百貫)以上を言い、それ以下を半鐘と呼ばれる、また口径約30cm以下を喚鐘とされる。     
日本に於いての梵鐘は妙心寺698年銘があり最古の梵鐘とされる、また当麻寺の梵鐘も銘文は無いが同時期か数年さかのぼる製作日とされている。
天下の三名鐘に ・音色の三井寺 ・銘文の神護寺 ・姿形飾文の平等院とされているが三井寺を除外して栄山寺を加える事もある。
日本三大巨鐘に数えられている寺院は以下の様に成る、知恩
(重量約70トン、高さ485cm、口径288cm、京都方広寺(重量82.8トン、高さ424cm、口径273cm東大寺(重量26.3トン、高さ412cm、口径276cmとなる。  

日本を代表する梵鐘         銅鋳造

所    属

指定

鐘  高

口 径

備     考

時   代

 年  代

妙心寺  

国宝

150,6

86,1

銘文の有る鐘では最古、黄鍾調(おうしきちょう)

白鳳時代  

 698

興福寺  

国宝

149,1

90,3

神亀四年の銘を持つ

天平時代  

 727

劔神社    (福井県)  

国宝

110,0

73,9

神護景雲四年の銘文身幅 88.5cm 厚 5.8cm

天平時代   

 770

常宮神社  (福井県) 

国宝 

 111,5 

  66,7 

天女の浮彫り, 日菁州蓮池寺鐘成 

新羅時代    

 833

西光寺   (福岡県) 

国宝 

136,2㎝ 

77,3㎝ 

                   

平安時代   

 839

大雲寺   (京都府) 

国宝 

115,7㎝ 

55,3㎝ 

当初は延暦寺西塔 現在佐川美術館 

平安時代   

 859

神護寺 

国宝 

147,6㎝ 

80,3㎝ 

三絶の鐘と呼ばれる名鐘 

平安時代   

 875

栄山寺 

国宝 

154,8㎝ 

89,7㎝ 

銘文道真選小野道風筆の伝承 

平安時代  

 917

建長寺    (鎌倉市)   

国宝 

207,3㎝ 

124,0㎝ 

蘭渓道隆銘文 物部重光作 

鎌倉時代

 1255

当麻寺 

国宝

150,6㎝ 

86,7㎝ 

最古の鐘681年頃と推定 

白鳳時代 

 

観世音寺 (福岡県) 

国宝 

159,4㎝ 

86,4㎝ 

道真が「観音寺只聴鐘声」と詠む  

天平時代 

 

東大寺 

国宝 

386,0㎝ 

276,0㎝ 

37、撞座蓮華紋に天平様 

天平時代 

 

東大寺 

 重文 

99,4㎝ 

57,0㎝ 

  

鎌倉時代   

 1264

東大寺 

 重文 

30,8㎝ 

21,0㎝ 

                   

鎌倉時代   

 1308

平等院 

国宝 

199,1㎝ 

123,0㎝ 

姿形絶品の平等院と言ばれる 

平安時代 

 

円覚寺    (神奈川) 

国宝 

259,1㎝ 

  142.4㎝ 

物部国光 

鎌倉時代 

 

法隆寺    西院  

 重文  

186,7㎝ 

 118,0㎝ 

  

天平時代 

 

法隆寺    東院  

 重文 

161,5㎝ 

 105,0㎝ 

  

天平時代 

 

知恩院

 重文 

 330.0

  280.0

70 

江戸時代 

 

園城寺 

 重文 

197,3㎝ 

133,0㎝ 

三井の晩鐘として音色で著名 

天平時代 

 

新薬師寺 

 重文 

173,0㎝ 

104,0㎝ 

 

天平時代 

 

薬師寺 

 重文 

198,9㎝ 

131,0㎝ 

 

天平時代 

 

東福寺 

 重文 

154,5㎝ 

100,0㎝ 

 

天平時代 

 

竜王寺    (滋賀県) 

 重文 

117,5㎝ 

66,0㎝ 

 

天平時代 

 

真禅院    (岐阜県)

 重文 

164,8㎝ 

101,0㎝ 

不破郡垂井町宮代 

天平時代 

 

大峯山寺 

 重文 

120,0㎝ 

66,5㎝ 

  

藤原時代  

  944

延光寺    (高知県) 

 重文 

33,6㎝ 

23,0㎝ 

  

藤原時代  

  911

本願寺 

 重文  

144,0㎝ 

106,0㎝ 

当初広隆寺所蔵 龍頭破損木彫後補

藤原時代 

  1150

金峯山寺 

 重文 

160,0㎝ 

124,0㎝ 

  

藤原時代 

  1160

唐招提寺 

 重文 

155,5㎝ 

91,0㎝ 

  

平安時代 

 

石山寺 

 重文  

151,2㎝ 

88,8㎝ 

  

平安時代 

 

報恩寺 

 重文 

123,5㎝ 

81,3㎝ 

  

平安時代  

 

戒長寺   (奈良県)   

 重文 

   

   

1291年の銘 十二神将像  

鎌倉時代  

 

広隆寺 

 重文 

45,5㎝ 

31,2㎝ 

鋳鉄製  

鎌倉時代  

 1217

清水寺 

 重文 

192,1㎝ 

124,0㎝ 

  

室町時代  

 1478

高台寺 

 重文 

205,0㎝ 

115,0㎝ 

  

江戸時代  

 1606

方広寺  (京都市東山区)

 重文 

412,0㎝ 

226,0㎝ 

最高の高さ 82.8    注1

江戸時代

 1614

金剛峯寺 (和歌山県) 

 重文 

146,5㎝ 

79,5㎝ 

  

室町時代

 1504

泉福寺  (和歌山県) 

 重文

  78.5

 

 観進入唐三度聖人重源の銘文

 鎌倉時代

 1176

深大寺   (東京都) 

 重文

124,4㎝     

68,8㎝ 

  

南北朝時代  

 1376

 
梵鐘には下部から ・駒之爪 ・下帯 草之間 ・撞坐 ・池之間 ・乳之間 ・上帯 ・笠形 ・竜頭 の名称がある、下段の
梵鐘の明細を参照されたい。  
梵鐘は130口程が国の重要文化財指定を受けており、国宝指定の梵鐘14
(和鐘13口+新羅鐘1口・太和七年三月日菁州蓮池寺鐘成)を全て収納して重文は抜粋で掲示した。
リストに知恩院の梵鐘を参考として挙げた、知恩院の場合は鐘高330.0㎝、口径280.0㎝、重量約70~75屯に比べて東大寺では鐘高386,0㎝、口径276,0㎝、重量37屯である、サイズ及び表面積に大差は無いが重量に著しい開きがある、鐘声を聴き比べる事も興味も倍増すると考えられる。

日本で鋳造された最大の梵鐘は四天王寺に幻となった巨大梵鐘が存在していた、総重量158トン・鐘高788.00cm・口径485cmの梵鐘で1903
(明治36年)に聖徳太子御遠忌すなわち1300年法要に発願されたが、太子の遠忌(おんき)突納(つきおさめ)2回使用されたのみで、1942(昭和17年)第二次世界大戦の供出命令で武器に転用された、これは日本三大巨鐘と言われる東大寺の27トン鐘高386,0㎝、知恩院の70~75トン鐘高485.0cm、京都方広寺の鐘高4120㎝、82.8トンと比較して現存する巨鐘を遥かに上回っていた、また覚王山日泰寺の梵鐘も約75トンと言われたが四天王寺と同様供出命令を受けた、日本に存在した梵鐘は九割が供出され多くが不用意な扱いを受けた様子である。 
世界最大の梵鐘にロシヤのイワン大帝の梵鐘は鐘高6014.cm 重量216トンの巨鐘があるが鋳造直後から歪みと破損があり吊りあげられた事もない
(株式会社・
岡本・技術顧問・堀江尚男氏より)、 因みに破損部分でも11.5屯あると言う(モスクワのランドマークと言える81メートルの大帝の鐘楼とは異なるので注意)。建立は1508年。

中国様式の梵鐘に重源に纏わる六葉鐘がある、梵鐘の下端に六ヶ所切込みを施し六葉に見立てた梵鐘で東大寺勧進所・笠置寺・阿弥陀寺
(山口県坊府市)など重源ゆかりの寺に存在する。
脱線するが寺院に於いて、梵鐘が使用されるのは現在では除夜の鐘がメインである、因みに中国(宋時代)では除夜の会は節分に行われた様である、節分とは年末ではなく立春・立夏・立秋・立冬など季節の変わり目の前日を言う、また除夜とは節分の夜に鬼が生まれるとされ夜を除く会が行われた、また本来は朝夕(現在は18に省略が多い)に突かれる108の数字に付いて煩悩の数とか、定かではないが六識(6)×識の程度(6)×過去、現在、未来、(3)=108、日本のみ通用する計算で四苦八苦から4×9+8×9=108等が言われている。

常宮(じょうぐう)神社の朝鮮鐘(国宝)は文禄の役に於いて加藤清正が戦利品(?)として請来した梵鐘であるが、韓国の市民団体より返還要求されている。
現時点に於ける世界最大の梵鐘は、2007年に完成した中国寒山寺の梵鐘で、全高8.608m、径5.242m、総重量108屯と言われているhttp://www.carillon.co.jp/china2.htm・世界名鐘物語参照)

 
梵鐘の名称
         真禅院 (岐阜県不破郡)重要文化財



注1、方広寺の梵鐘は「国家安康」「君臣豊楽」「国家安康」「君臣豊楽」「子孫殷昌」「右僕射源朝臣家康」の文字で著名  H4.2m  w2.8m  D27cm

2、 21世紀の於ける日本最大のサイズ(重量ではない)を持つ二口の梵鐘は兵庫県加東市の無量寿寺で約48トンは重量では方広寺や知恩院に劣るが、高さ5.500mm:直径3.300 mmで両寺に勝る様である。 

3、 
* 劔神社の所在地   916-0215 福井県丹生郡越前町織田113-1  ℡:0778-36-0404    
    * 常宮神社 常宮 敦賀市常宮  ℡ 0770-26-1040  
    *
 西光寺 所在地  〒811-1123 福岡県福岡市早良区内野2丁目7−13   
    *円覚寺   所在地     神奈川県鎌倉市山ノ内409   
 
燈籠リスト 
    

 

寺 名 

材 質 

適 用 

時 代 

 

 東  大  寺 

 銅 鋳 造

 八角 462,0cm 

 天平時代 

 

 興  福  寺 

 銅 鋳 造

 236,0cm 

 天平時代  816年 

 ●

 観  心  寺 

 鉄 鋳 造

 227,9cm 

 鎌倉時代 1233 

 ●

 鞍  馬  寺 

 銅 鋳 造

231,2cm  

 鎌倉時代 1258 

 ●

 金 峯 山 寺 

 銅 鋳 造

370,2cm 

 室町時代 1471

 

 橘 寺  

  造  

 橘寺型 

 南北町時代  

宋の工人・陳和卿(ちんなけい)の手になる銅鋳造鍍金を施した最大の銅製燈籠で H4621cm 火袋四面に音声菩薩と呼ばれる天女像・獅子などが彫刻、竿に罪人を地獄に運搬する火の車に付いて書かれた「菩薩本行経」、仏に対して献灯の功徳を言う「施燈(せとう)功徳経」、献灯の功徳の「業報差別(ごうほうしゃべつ)(きょう)」、喜捨の功徳を書いた「阿闍世(おう)受決(じゅけつ)経」が記述されており拓本も存在していると言う、現在も大法要、満燈会、大晦日から元旦にかけて燈火されている。(国宝指定1956628日)
日本から太平洋戦争終結の賠償金を請求するなら東大寺の八角燈籠一基で充分との連合軍将官のジョークが伝わる逸品である。


繍佛リスト 

 

寺 名 

名 称 

適 用        

時   代 

 

 中 宮 寺

天寿国繍帳

絹綾織 刺繍  H88,8㎝ W82,8

 飛鳥時代

 

 奈良国立博物館

釈迦説法図

絹平織 刺繍 H207,6㎝ W158,2 

 唐  時代 

 

 当 麻 寺

浄土曼荼羅

絹綴織 平織 H394,8㎝ W396,9

 唐  時代

 

 最終加筆日200495日 2013年10月24日 2015年4月2日 2017年5月7日  2021年12月6日 
 


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