ジャナ教


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インドに於いて二千五百年以上の歴史を持つ宗派である、バラモンを構築しインドを席巻したアーリア人は、牧畜から次第に農耕に転じ都市を形成して教義的なヴェーダ聖典Veda 知識典 注1が実情にそぐわず(かげ)る様になる、当時の流れで反バラモン運動の中で登場したのが仏教ジャイナ教である、後述するが仏教とは違う宗教であるが、発生の時期 地域を同じくしており、教義面でも著しく共通項が多い。 
梵語名 jaina と言い輪廻(ジナ)からの勝利者、仏教で言う解脱を意味する、英語では jainism (ジナの教え)となる、禁欲とアヒンサーahi即ち非暴力を称え、不殺生戒すなわち食の為に動物を殺傷しない菜食主義の嚆矢でもある、ジャイナ教の発生はと地域及び時代は概ね仏教と同じくしている、特徴は論理的に禁欲と不殺生を標榜している。 
先駆者パーサに次いでジナに勝利した二十四人目に位置し開祖となるマハーヴィーラ
(bc580500年頃・Mahāvīra・偉大な勇者釈尊はライバルであったとも言われ、競い影響しあった宗教で教義上の共通点を多く持ち欧米の研究者の間では仏教の分派と誤解された時代がある、総ての生き物に霊魂があると言い・不殺生・禁欲・苦行を説く、佛教の看板とも言える縁起説に付いてはジャイナ教が先行して説いていた、因みにブッダとマハーヴィーラは伝記などに於いて著しい共通点が観られる。

解脱(げだつ),、涅槃(ねはん)、に付いて述べれば、涅槃=解脱と言える、涅槃とは輪廻からの離脱を解脱と言う、また涅槃には*有余(うよ)涅槃と *無余(むよ)涅槃がある、すなわち有余は生身の状態で覚りに入れた即身成仏に近い状態である、無余は人生を終えた時点での覚りの状態と言える

仏教特に原始仏教との共通点は多くあり、如来・羅漢等々の呼称や・苦諦dukha ドウクハ) ・戒律śīla とVinaya) ・涅槃Nirvāa) ・輪廻(サンサーラ sasāra) ・解脱(モークシャ moka) (ごう)(カルマ karman・過去仏思想などの酷似した共通点を持ち、欧州では仏教の一宗派とか双子姉妹の宗教と言われた時代がある、因みにaは否定詞でヒンサーhiは暴力を意味する、業報(ごうほう)輪廻saṃsāra) これ等はインド古来からのエトスと言えよう。 
教義の基本はトリ・ラトナ
(tri-ratna)即ち「三つの宝」にある、1、正しい信仰、2、正しい知識、3、正しい行いを掲げる、仏教との相違は煩悩除去の手段、すなわち苦行・禁欲に対する是非・優先順位の相違であろう。
もう一つ相違点としてインド社会のエトスとも言える業すなわち・身・口・意の三業であるが、佛教の三業でなくジャイナ教では思惟するのみで行動しない「意」を加えない、業の分類法に個人の業を言う「不共業」と地域及び社会に於ける「共業(ぐうごう)」に分類される。
インド国内に於いては商人など財力がある信徒の比率が多く、国内に影響力を持ち約365万人の信徒を持ち現在も存続している、煩悩の除去を言うが、非苦非楽の中道を行く仏教との相違点を挙げれば、ジャイナ教は煩悩を滅する為の著しい苦行・禁欲を是とする事にある、因みにジャイナ教の経典「聖仙の言葉」すなわちイシパーシャイムに於いてはライバル関係にあった仏教の祖は釈尊ではなく十大弟子のひとり舎利弗
śāriputra・シャーリプトラ)であると言う記述もある、インド全人口御0.5%程度の信徒数であるが堅固な社会基盤を築いている、不殺生 戒(ふせっしょうかい)の信条は慈悲は人間だけに留まらず動物類にも及ぶ、寺院の中に鳥などの動物の病院を持ち怪我をした小鳥などに外科手術を行い回復後の放つと言う、また後期高齢の牛が余生を過ごす施設もあり何れも信徒の寄付で維持されている。         
因みにBC五世紀以前はアンチバラモンを標榜する教団を持つ自由思想家が群雄割拠しており、代表的な六教団及び祖を仏教の側から異教徒の祖を「六師外道」と呼ばれジャイナ教もこの範疇にあった、また舎利弗や目連が釈尊に帰依する以前に所属していたサンジャ・ベーラッテイブッダの提唱する教団も六師外道に入る、ジャイナ教はインド以外に伝播することは無かった。

ジャイナ教は最盛期の10世紀頃に建立された寺院や塔を多く残している経典語はマガダ語すなわち「アルダマーガデー」ardhamāgadhīと言う言語で記述されていると言う。

因みに仏教でも釈尊が説法に用いたのは古代インドに於けるアーリア語の一種であるマガタ語すなわちマーガディーMāgadhīとの説がある、系列的にはバーリ語iに近いとされる、仏教とジャイナ教の相違は極端な苦行・禁欲で業を滅する方法を釈尊は否定している 苦蘊小経(くうんしょうきょう) (Cūladukkandha sutta  チューラドゥッカッカンダ・スッタ)) 
ジャイナ教は教説に相違はあまり見られないが、佛教が上座部仏教から別れて、大乗仏教が興る時期と近い時期に、白衣を着ることを容認し、男女平等を言う白衣派(シュヴェーターンバラ śvetapaaと裸形で過ごし男女平等を否定する空衣派(デイガンバラ diganbaraに分裂する、更に儀典の組織化 偶像崇拝の容認や否定なお信仰形態の相違から数派に分裂する、この時代不殺生戒を標榜するジャイナ教内の葛藤で殺戮が存在したと言う記述がある(初期仏教 岩波新書 馬場紀寿)



*酷似しているとされる仏教とジャイナ教の在家信者の五戒の相違を挙げる。 

   1 2  3戒  4戒  5戒
 仏教  不殺 不偸盗   不邪淫  不妄語  不飲酒
 ジャイナ教  不殺生 不妄語  不偸盗  不邪淫  不所有

 5の不飲酒と不所有の相違だけである。



 信徒数365万人~450万人



仏教から見た異教徒達で著名な外道に六師外道がある、ジャナ教も範疇にある、BC五世紀以前にガンジス河流域付近で活動したバラモン、ヴェーダ聖典派の哲学を否定する六人の自由思想家たちで、ジャイナ教の祖や、舎利弗・目連が釈迦に帰依する以前に所属したサンジャ・ベーラッテイブッダの提唱する教団等を言う。
仏教側から仏教徒以外を異端として外道と呼ばれ、仏教徒を「内道」と呼称された。

*阿耆多翅舎欽婆羅(アジタ、ケーサカンバリン Ajita Kesakambalin唯物論者で人は地、水、火、風の四元素から成ると言う。

*迦羅鳩駄迦旃延(バクダ、カッチャーヤナ Pakudha Kaccayana諸物は地、水、火、風、苦、命から成る七要素説。

*不蘭那迦葉(プーラナ、カッサバ Purana Kassapa道徳否定論。悪業の果報、善業の果報は無い、予定調和説的。

*末迦梨瞿舎利マッカリ、ゴーサーラ Makkhali Gosala)裸形托鉢教団。

*刪闍耶毘羅胝子(サンジャ、ベーラッテイブッダ Sanjaya Belatthiputta懐疑論者。

*尼乾陀若提子ニガンタ、ナータプッタ Nigantha Nataputtaジャナ教の祖、相対論、ニガンタ、ナータプッタはマハーヴィーラの本名である

 

*上記四番目のアージーヴィカ教は、運命・宿命をトッププライオリテーとする哲学で、バラモン、佛教、ジャイナ教等と時を同じくし競い合った大きな宗派である、宗祖のマッカリ・ゴーサーラは佛教から六師外道の一人にカウントされていた、エローラのローマス・リシ窟はアージーヴィカ教徒の遺跡とされている。

注1、ヴェーダ聖典(Rgveda) BC2000500年ころのインドに於ける最古の経典の一つでバラモン教に於ける神々を讃える賛歌、呪文を主体とする経典である、古い順に リグ・ヴェーダ、 サーマ・ヴェーダsāmaveda、 ヤジュル・ヴェーダyajurveda、 アタルヴァ・ヴェーダatharvedaがある、因みにヴェーダとは漢訳経典では明呪とか智識と訳されている、表現を変えれば、「神々への賛歌、祭祀の集合及び呪文」したものである。 
リグとは讃歌を意味しヴェーダはバラモン聖典をさす、゙サンヒター Samhiā 讃歌 ・呪文 ・祭詞を集成した本集、 ブラーフマナ Brāhmanā サンヒター補助部門、 当初は口伝で伝承されたが文字の発達に伴い文書化された、また中国では「梨倶吠陀」と記述される、サンヒターとはヴェーダの本体部分を言うブラーフマナ、アーラニヤカ、ウパニシャッドは注釈・解説、思想哲学部分を言う

リグ・ヴェーダ聖典 Rgveda BC2000500年ころのインドに於ける最古の経典の一つでバラモン教に於ける神々を讃える賛歌を主体とする経典である、 リグ・ヴェーダ、 サーマ・ヴェーダsāmaveda、 ヤジュル・ヴェーダyajurveda、 アタルヴァ・ヴェーダatharvedaがある、因みにヴェーダとは漢訳経典では明呪とか智識と訳されている、表現を変えれば、「神々への賛歌、祭祀の集合」したものである。 
リグとは讃歌を意味しヴェーダはバラモン聖典をさす、
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゙サンヒター Samhiā 讃歌 ・呪文 ・祭詞を集成した本集、
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゙ブラーフマナ Brāhmanā サンヒター補助部門、 
当初は口伝で伝承されたが文字の発達に伴い文書化された、また中国では「梨倶吠陀」と記述される。 
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゙アーラニヤカ Aranyaka 森林書 呪文、祭義の解説

   ヴェーダ聖典に於いて最も熟成したのが、
*ウパニシャッド(梵語 奥義書)である、その思想は汎神論(はんしんろん)の発端を示している、梵我一如 (中村始仏教入門 春秋社)汎神論とはブリタニカ国際大百科事典に依れば神と存在全体 (宇宙、世界、自然) とを同一視する思想体系。両者を一元的に理解し、両者の質的対立を認めない点で有神論pantheism)とは異なる。歴史的諸宗教において、その神秘的側面を理論化する際に表われる体系化の一つの型である、たんてきに言えば総ての存在は神である、神と世界とは一体と観る宗教観、思想観と言える。
ヴェーダ聖典を読むことを許されている階層は婆羅門brāhmaaだけに限られる様である。 

 

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2014102日 世界の宗教から独立、20161152017528日 2019年1月17日加筆





 

 

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