仏像案内 寺院案内 如来 明王 天部 仏師 仏像名称
観音経・三十三観音の内で時折散見される数尊を挙げる、
*白衣観音 梵語 pāṇ ḍuravāsinī 白処・大衣・服白衣観音などとも呼ばれ常に白蓮華の中に住み、阿弥陀如来の妻で観音達を生んだ母ともいはれる、中国に於いて愛された観音菩薩で除病・安産・求子・育児祈願に霊験が信じられている。
*水月観音 梵語 udaka-candra-bimba、ウダカ‐チャンドラ‐ビンバ 密号を潤生金剛と言い宋の時代中国で篤く信仰された、水に写された月を意味し佛教の蘊奥・般若心経の言う空を顕わし幻・夢など仮設であり実体は存在せずと主張する観音菩薩である、鎌倉時代以降の清凉寺像・東慶寺像などが著名で、画技に優れた禅僧達により月の下で水に浮かぶ蓮華の上で観想する水月観音や白衣観音が多く描かれた。
udaka-candra-bimbaには幻・夢・響の意味を持ち「空」に繋がり般若心経を具現化した菩薩とも言えよう、多くが右に施無畏印と左に蓮華の蕾を持つ。
*楊柳観音 薬王観音とも呼ばれ水辺をイメージした岩座上で右手に柳枝・左手を乳の上におき病難の排除を信仰される。
*魚籃観音また北斗七星を菩薩に見立てた妙見菩薩等々多くの菩薩も存在するが作例は極めて少ない、滋賀県湖北の鶏足寺に魚籃観音の秀像が収蔵されている,その他魚籃観音を安置する寺は・東京都港区三田4-8-34の魚籃寺(秘仏) ・千葉県松戸市の万満寺(鋳像) ・三重県津市の初馬寺(石造・水掛魚籃) ・鎌倉市大町1丁目11−4の別願寺等に存在する。
*獅子吼観音
獅子吼観音菩薩はインドに於いて八~十二世紀頃造像され、獅子の上に坐す輪王坐が多く、シヴァ神をイメージさせる、獅子吼観音菩薩はネパールやチベットでも五百尊図像集等で観ることが出来る。
*青頸観音
*蓮華網観音 中国や日本での馴染はないが、チベット等での信仰は篤い、妃を抱擁しながら舞う秘仏様の観音菩薩である、十一面十二臂像と四面八臂像がある、シヴァ神の様式を踏襲しており三眼、半月、髑髏杖、カパーラ(男性器)などを特徴とする、神の恩寵を重視し、カースト制度を否定
*ハリハリハヴァーハナ生起観音
*薬王菩薩(bhaiṣajyarāja、バイシャジャーラージャ) 薬上菩薩(バイシャジャサムドガタ) 法隆寺のシンボルとも言える金堂の釈迦三尊の脇持を務めているが、日光菩薩・月光菩薩と共に薬師八大菩薩として薬師本願経に存在する、兄弟の長者で良薬を用いて衆生を救済するという、薬王菩薩が兄で前世では星宿光長者と言い覚者となり浄眼如来となる、弟の薬上菩薩の前世は雷光明長者と言い後に浄蔵如来となる、但し徑軌には法隆寺の様な持物の記述は無いが、他には薬壺や薬草を持つことがある、但し法華経、薬王菩薩本事品二十三には前世は「一切衆生喜見菩薩」で法華経守護と釈尊の為に自己犠牲な布施をしている。
「薬師本願経」に於いて薬師八大菩薩に入り、阿弥陀二十五菩薩にも名を連ねる、また法華経の「薬王菩薩本事品」第二十三にも著されている。
法隆寺の他に興福寺の仮金堂に江戸時代の薬師如来に従う薬王・薬上菩薩立像がある。(木造 漆塗 薬王362,0cm 薬上360,0cm 鎌倉時代)
また疆良耶舎の訳した「薬王薬上菩薩経」の施薬の菩薩と記述されて敦煌壁画にも存在している様である。(仏像・NHKbooks)
余談になるが法華経の第二十三「薬王菩薩本事品」には過去の一切衆生喜見菩薩時代に法華経と日月浄明徳如来の為自身の肘を燈明として着火して供養したと記述があるが、大宝律令二十七条に於いて僧尼令と共に生贄的供養すなわち「
*大随求菩薩 梵語名マハーブラヂーサラー(Maha‐pratisara)と言い「大随求陀羅尼経」の具現像である、大随求(だいずいぐ)とは信者の求めに対して自在に応じるとする意味を持ち大自在菩薩と同尊である、随求に関する陀羅尼を伝える真言宗で篤く信仰されている。主な利益は無限の罪を解き、風雨を止め、戦乱兵火を鎮めるという、慈悲円満相を持ち八臂に梵篋・五鈷杵・宝輪・剣・斧等を持ち蓮華座に座る、胎蔵界曼荼羅に於いては蓮華部院(観音院)最上段に慈悲円満相で存在する。 mahā-pratisarā
真言密教の興隆から平安時代に随求陀羅尼が重要視されたが造像例は少なく清水寺の随求堂の本尊として、豊臣秀吉の念持仏として高台寺に毘沙門天をその妻の吉祥天を従えて存在する、両尊とも秘仏であるが清水寺は胎内めぐりが出来る、姿形は慈悲円満相を持ち、八臂で右手に五鈷杵、剣、斧、三股戟、左手に輪宝を乗せた蓮華、索、宝幢、梵篋を持ち、蓮華坐に座る、胎蔵界曼荼羅の蓮華部院に姿を現している。
絵画では観心寺に重文指定の大随求菩薩像 絹本著色 掛幅装(104,2:58,5㎝) 鎌倉時代の絵画が存在する。
*五大力菩薩 鳩摩羅什や不空訳の「仁王般若波羅蜜経」にあり菩薩名は経典により相違はあるが、金剛手・金剛宝・金剛利・金剛夜叉・金剛波羅蜜多、を言い秋篠寺や醍醐寺に存在して菩薩であるが憤怒相がある、画像に於いては高野山の絵画が国宝指定を受けている、(五大力菩薩像 縦322,8cm 金剛吼菩薩像 237,6cm 竜王菩薩吼像 179,5cm 無畏十力菩薩吼像 179,5cm 五幅のうち三幅現存 有志八幡講) (注1)、像容は修験道の本尊である金剛蔵王権現に似ている。
*女性尊 インドやチベットでは菩薩の中で最も信仰を集めたのが観音菩薩である、中世インドには佛教・ヒンズー教とも女性尊の信仰が拡大した、佛教ではターラー(多羅菩薩)が最も崇拝され孔雀明王(マハーマユリー)・准胝観音(チュンデイ)などが日本に伝わった。多羅菩薩は梵語名tara(ターラー)の音訳を言い眼精・星輝と意訳される、観音菩薩の化身とされ三尊形式では釈迦如来の脇侍を務める事がある、願望・気運などなど成就のご利益を有すると言う。2007年3月2日
*阿弥陀如来に従う二十五菩薩を挙げる。 ・観音菩薩 ・勢至菩薩 ・薬王菩薩 ・薬上菩薩 ・普賢菩薩 ・法自在菩薩 ・獅子吼菩薩 ・陀羅尼菩薩 ・虚空藏菩薩 ・徳藏菩薩 ・宝藏菩薩 ・金藏菩薩 ・金剛藏菩薩 ・光明王菩薩 ・山海慧菩薩 ・華厳王菩薩 ・衆法王菩薩 ・月光王菩薩 ・日照王菩薩 ・三昧王菩薩 ・定自在王菩薩 ・大自在王菩薩 ・白象王菩薩 ・大威徳王菩薩 ・無辺身菩薩 となる。
*法華経には膨大な数の如来、菩薩が登場するが、代表例として「四大菩薩」すなわち「
参考として釈迦三尊像の源流と言える像は雲崗第十六窟の如来立像や龍門石窟賓陽中洞の本尊等著名な石窟寺院に見ることが出来る石窟寺院とは山は精霊の住む場所であり、そこに彫られた石窟はガルバ(子宮)と呼ばれ戒律を遵守し石窟瞑想の世界に於いて悟りを目指す格好の場所である、石窟寺院は人里から隔離されているが交通の要路近くに彫られており、水・寒暖に優しいところが選ばれている、代表的な石窟寺院にインドではアジャンター・エローラ・アフガンのバーミヤン・中国の敦煌・雲崗・龍門・韓国の石窟庵等を挙げる事ができる。
主な菩薩像の一部
○法隆寺 薬王菩薩・薬上菩薩 銅像鍍金 90,7cm 92,4cm 飛鳥時代 金堂 釈迦三尊の脇持
○中宮寺 木造彩色 伝如意輪観音 87,0cm 飛鳥時代 如意輪観音と重複
○宝菩提院 伝如意輪観音 木造 88,2cm 平安時代 如意輪観音と重複
○平等院 雲中供養菩薩 52尊 木造 浮彫 漆箔彩色 38,8~87,0cm 藤原時代
南4号(金剛菩) 南8号(花巌)南20号(満月)南21号(金剛光)南24号(愛)の墨書が有る。
●唐招提寺 衆宝王菩薩 木造 173,2cm 奈良時代
●唐招提寺 伝獅子吼菩薩 木造 171,8cm 奈良時代
●唐招提寺 伝大自在菩薩 木造 169,3cm 奈良時代
●東大寺 菩薩立像 木造漆箔 玉眼 102,7cmcm 鎌倉時代
●東京国立博物館 菩薩立像 木造金泥彩色 玉眼 103,4cmcm 鎌倉時代
●読売新聞社 妙見菩薩 木造漆箔 玉眼 155,1cmcm 鎌倉時代
●三千院 救世観音坐像 木造漆箔 玉眼 38,8cm 鎌倉時代
●大安寺 揚柳観音立像 木造彩色 168,2cm 鎌倉時代
●泉湧寺 楊柳観音 木像 130,5cm 南宋(鎌倉時代) 楊貴妃観音
●竹林寺(高知) 白衣観音立像 木造漆箔 玉眼 100,8cm 室町時代
注1、五大力菩薩は金剛峯寺(八幡講十八箇院)に仁王般若派等蜜経(仁王経)の旧訳(鳩摩羅什)を依経とした三尊・絹本著色 掛幅装 (金剛吼237,6cm、竜王吼179,5cm、無畏十力吼179,5cm)が国宝指定を受けている、また秋篠寺(無指定)にも安置されている。
前述の尊挌は姚秦、鳩摩羅什訳とされる「仁王般若波羅蜜経」の旧訳の尊名であるが、不空(705~774年)訳の新しい「仁王護国般若波羅蜜多経」の尊名は中尊・金剛波羅蜜多菩薩(不動明王)、東尊・金剛手菩薩(降三世明王)、南尊・金剛宝菩薩(軍荼利明王)、西尊・金剛利菩薩(大威徳明王)、北尊・金剛夜叉菩薩(金剛夜叉明王)である、因みに()内は関連の明王である、閑話休題、仁王般若経(鳩摩羅什訳・不空訳)は法華経、金光明経と共に護国三部経の一典である。
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最終加筆日 2004年7月8日 12月7日 2006年11月8日水月観音 2016年7月14日獅子吼、青頸観音他 2017年11月14日 2020年7月5日加筆