多羅仏母・多羅、救度仏母・
インドでは民衆の土着思想を取り込み「明妃」即ち女性菩薩が取り入れられた、ターラーは大乗仏教時代から存在している、女尊では嚆矢の菩薩である、金剛薩埵
ターラーはエローラ石窟群(Ellora caves)だけでも20尊程存在し、インドやチベット等で絶大な人気を持つ女尊であったが経典類は少ない、依経となる漢訳経典を挙げれば「
重ねて言えばTārāは中国~朝鮮~日本での人気、作例は稀少であるが、チベット密教では重要な尊格と人気を有しカダム派では、・釈迦如来・観音菩薩・不動明王と共に四本尊に数えられている、通常の姿形として右手で予願印を示し、左手は青蓮華を所持する例が観られる(ビハール出土、ニューデリー国立博物館)
観音菩薩の眼から派生したとされる女性の菩薩であるが、観音の右目の涙からは白多羅が、左目の涙からは緑多羅が生まれたと言う伝承がある様だ、但し伝承は伝承であり割り引いて聞かなければならない。
作例としては六世紀頃と古くはないが多くの種類のtārāが造像されインドのエローラ石窟(Ellora caves)
典拠となる経典は「大方広曼殊室利経」(不空訳・大20・ 1101) 、「不空羂索神変真言経」などである、多羅の件は玄奘の「大唐西域記」にも記述がる、中世インドにはアーリア人の信仰するバラモンの男女差別とカースト制度に対するアンチテーゼの為か、七世紀頃からヒンズー教に於いて女性尊の信仰が拡大する、女人救済を目指して「変成男子(転女成男)」すなわち男性に性転換して成仏させる、と言う些か無理な救済をしていた大乗仏教から密教時代になり多羅菩薩を嚆矢として女尊の採用を始めた、釈尊は女性差別を行わなかったが、上座部に於いてバラモン等インド古来の女性蔑視の思想を踏襲した、因みに薬師如来の瑠璃光浄土には以上の理由もあり女性は存在しない。
ヒンズー教の著名な女性尊が多く、尊い女性を明妃と呼ばれていた、インド、チベット等々の仏教ではインド古来の女神信仰と言うエトスがナーランダ(Nâlandâ)やマガタ国(Magadha)、パータリプトラ(梵語 Pātaliputra、pāḷi語 Pātaliputta)に存在したと言われ、ターラー(多羅菩薩)が最も崇拝されたが中国や日本に於いて胎蔵曼荼羅の蓮華部院(観音院)に描かれる以外は造像される事も信仰を得る事も無かった、因みに密教名すなわち密号は悲生金剛・行願金剛などとされる、多羅菩薩は観音菩薩の輝く瞳(tārā・ターラー)からとか、慈悲の涙からとか生まれたとされる、同じく観音の眉の皺から生まれた毘倶胝(ブリクテー Bhṛkuṭī)と共に観音の脇侍を務める女性尊である、密教では特にこれ等の女尊を総称して
インドで登場した時代は密教の中期以降で中国では唐時代末か宋の時代であり、空海の帰国後に当たる。
ビハール州クルキハールで出土したターラーはインド仏教美術史の最後期に位置するパーラ朝(9世紀頃の作と10世紀頃)の2尊が知られている。
日本に於いて信仰された女性尊は孔雀明王(マハーマユリー・ahāmayūrividyārājñi)・准胝観音(チュンデイ・cundi)の二尊が信仰された代表尊と言える、もう一尊「八千
多羅菩薩は梵語名 Tārā(ターラー)の音訳を言い意訳に於いては眼精・星輝を意味する、観音菩薩の眼から発せられる光明から生まれ、観音化身とされ三尊形式では釈迦如来の脇侍を務める事がある、願望・気運などなど成就のご利益を有すると言う、脇侍の姿形は緑色で左手に華弁の先端が鋭い青蓮華を持ち右手で華を開きふくよかな胸を示す、観音菩薩の目から生まれただけにチベット等に多い白多羅菩薩は魅惑的な肢体白い肌をしていて両目のほかに、第三の目と両手のひら・両足の裏にも目を持ち七眼で慈悲を発する、「大方広曼殊室利経」の観自在多羅菩薩儀軌法に依れば、観音菩薩が普光明多羅三昧と言う三昧に入ると”右の瞳から大光明が放たれ光明と共に妙女が形を現すと言う、またターラーは世間母と呼ばれ、大乗の尊格総ては多羅の子であるとの記述がある(仏教の女神たち 森雅秀 春秋社)。
通常は「二十一尊多羅礼賛経」があり多様な表情や色の相違を見せてサルベージする衆生の前に現れると言う。
特にチベット仏教に於いては別名「
多羅は大乗仏教の興りと時を同じくして生まれた女性尊で大唐西域記に於いて観音菩薩・文殊菩薩・弥勒菩薩と共に顕わされている。
女性尊崇拝に付いては釈尊が覚者と成る直前に誘惑したのは女性であった事から当初は否定されていたが、インドに於ける国民性に依るものか男女の抱擁、性行為などは秘事ではなくなり後期密教に継承される、多羅とは渡すと言う意味もあり彼岸への救度を行う信仰もある、その他多羅と並ぶ女尊では宇宙の根本をなす女性原理を指すと言われる「般若波羅蜜(プラジュニャー パーラミター prajñā paññā)」、孔雀仏母とも言われる「大孔雀明妃(マハー マユリー Mahāmāyūrī)」等”
* 嵯峨大覚寺門前の青蓮庵(真言宗 単立)の本尊は多羅菩薩である。
注1、中外日報社のネット上では「般若心経」のチベット語版の書名には、「女尊即ちバガヴァティたる般若波羅密多の心髄」に記述を見る、「バガヴァティ Bhagavathi」とは「母」「仏母」という意味を言う様である。
2007年3月2日 2008年10月1日 更新 2009年11月3日 21尊多羅礼賛経 2012年4月7日七眼他 2013年7月8日白多羅他 2015年9月4日tārā他 2016年4月8日 8月13日 2017年3月29日 11月16日 12月30日 2018年9月9日 2019年4月16日 12月25日
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