宇宙の原理すなわち法身仏である大日如来の胎内を具現した絵と言えよう、「
閑話休題、初期密教から大日経へのパス(path)は直接でなく、チベット大蔵経に記述がある「金剛手灌頂タントラ」が言われる。
金胎両部の曼荼羅の内で胎蔵生曼荼羅は金剛界の智に対して理を言う、理は「
胎蔵生曼荼羅の意味に付いては大日経に記述があり、金剛手秘密主の仏への質問の回答としてとして「諸仏を
大日経は理論編と実践編に分かれており理論編から作られたと言う、正式名称は「
津田真一氏に依れば空海の哲学思想の根幹は大日経にあると言う、善無畏三蔵は大日経住心品を「入真言門住心品」と訳しており、空海の代表作である十住心論は大日経住心品から由来したと言う、また日本教(注3)と言う造語の創設者の一人である山本七平氏をして十住心論は日本教の知られざるバイブルと言う。
胎蔵界曼荼羅は大日経の一章「入真言門住心品」(理論の部)七章「供養念誦三昧耶法門真言行学処品」までの経典で、二章の「入曼荼羅具縁真言品」(実践の部)に説かれる十三部院の内四大護院を除く十二院を中心に解釈を広げて製作された。
十二院は三重の構造を為している、即ち下述の1、中台八葉院から5、持明院までを初重とし6、釈迦院から11、除蓋障院までを第二重として12、最下院を第三重としている、これを「三句の法門」と結び付けている、「大日経第一章入真言住心品の三句の法門」とは・菩提心・大悲の根本・究竟の方便を言う。
大日経は三句すなわち ①菩提心を因とし、 ②大悲を根とし ③方便を究竟となす、と説かれておりこれが胎蔵界曼荼羅は三句を図像化されたと言う。
胎蔵界曼荼羅の正式名称は「大悲胎蔵生曼荼羅」と言い、真言密教では本来の略称は
胎蔵生曼荼羅の中心である
胎蔵界曼荼羅の範疇に入る曼荼羅を挙げる。
「阿闍梨
「
「広大軌曼荼羅(大毘盧遮那広大儀軌)」「玄法寺軌曼荼羅(大毘盧遮那成仏神変加持経蓮華胎蔵悲生曼荼羅広大成就儀軌供養方便会)」
「青龍寺軌曼荼羅(大毘盧遮那成仏神変加持経蓮華胎蔵菩提
曼荼羅は当初蓮華形や円形であったが中国に招来される過程に於いて現在の形態となる、源流は仏部(中台八葉院)・蓮華部・金剛手部の三部で構成されていたとも言われ密教の興隆により、仏部が釈迦如来から大日如来に変更されたとされる、従って周囲に従う菩薩は顕教からの金剛手菩薩、観音菩薩、弥勒菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩である、これに地蔵院の地蔵菩薩と除蓋障院の除蓋障菩薩を加えて密教の八大菩薩が構成される。
曼荼羅の胎蔵界曼荼羅編を参照願います。
胎蔵曼荼羅は409 尊・12区画すなわち「十二大院」により構成されており以下のようになるが中台八葉院を中心に縦のラインで智慧を表現し横のラインに於いて慈悲を現しているとされる、下記に十二院の概略説明を記述するが経典と尊名の相違が場合は原図曼荼羅を優先した。
1,中台八葉院―原図曼荼羅では深紅に塗られた八葉の蓮弁の中心、花心台すなわち
・発心の徳と菩提心を起こさせる為に、宝物で作られた幢(旗)印を持つ宝幢如来(
・修行の徳と菩提の華を開き汚れなき開敷華王如来(
・菩提の徳と慈悲の光が無限の慈悲を示す無量寿如来(
・涅槃すなわち覚りと執着を滅する法音を響かせて導く天鼓雷音如来(
2,遍智院(佛心院)中台八葉院の上に位置している、遍智とは総てを知る智を意味する、貪・瞋・痴すなわち煩悩の闇を照らし魔を超越した主尊すなわち一切遍智印・諸仏心印とも言われる△三角火輪(大日経蔬では上下逆の記述▽)を描いた一切如来智印を中心に、向かって右から
・二十臂に杖や輪を持つ
・剣と宝珠を
・左に諸仏を生み出した
・
因みに三角火輪は一切如来の
(sarvatathāgatajñānamahāmudrā サルヴァ・タターガタ・ジュニャーナ・マハームドゥラー)
3, 金剛手院ー金剛部院・薩埵院とも言い、付法八祖の第二祖である金剛薩埵、を主尊として33尊を配し佛の智慧すなわち大智の徳を著わし、煩悩を打破する金剛杵や剣を手にしている、三列七段構成、21尊の理智的な相をした菩薩の内最下段右で障害の鎮魂を担当する
右上部から下部へ・発生金剛部菩薩 ・
上記の内「大日経具縁品」於ける諸尊は・金剛手持金剛菩薩・持金剛峰菩薩・憤怒月黶菩薩・金剛鎖菩薩の5尊で多くは秘密曼荼羅品から引用された。
4, 蓮華部院―観音院とも言い大日如来の大悲救済示す、七尊のみ記述されている大日経と尊数に相違はあるが金剛手院と尊数を合わせる必要もある、
蓮華部発生菩薩 ・大勢至菩薩 ・毘倶胝菩薩 ・奉教使者 ・聖観音菩薩 ・蓮華軍荼利 ・多羅菩薩 ・多羅使者 ・大明白身菩薩 ・蓮華部使者 ・馬頭観音菩薩 ・大随求菩薩 ・蓮華使者 ・薩凱婆大吉祥菩薩 ・耶輸陀羅菩薩 ・使者 ・如意輪観音 ・宝供養使者 ・大吉祥大明菩薩 ・
下図に使者・童子は明示してありません。 (蓮華部院の尊像は仏像図典)。
5, 持明院(五大院)― 中台八葉院の真下に位置し五大院とも呼ばれ大日経転字輪曼荼羅行品では大日如来の持明使者として不動明王等の5尊が記述されている、但し大日経には勝三世の記述があり降三世と同尊説の根拠とされる、具縁品には不動如来使者(acalanātha)、持金剛、勝三世(降三世 trailokyavijaya)が記述されている、因みに持金剛とは歓喜佛とも言われる、後期密教に於ける本初佛、即ち根源佛で宇宙の根源的な佛挌で金剛薩埵などと同挌とされる。
梵語のvidyā ヴィドラー(知る)即ち智慧者を意味する、持明者即ちvidyārāja(ヴィドヤーラージャ)の王者(持明王)の集合所である。
真言・陀羅尼を有する者即ち智慧を持つ者を意味すると言われる、東寺の羯磨曼荼羅は仁王教からの引用とされるが持明院を参考にして空海の新たな解釈と考えたい、大日経・具縁品に記述が無いが、中央に
向かって右から不動(acalanātha)・降三世・大威徳・勝三世の憤怒形をした四明王の5尊を配し降伏のパワーを示す即ち自我者を憤怒降伏の姿で般若に導く、金剛手院の智慧と蓮華部院の慈悲の実働部隊でもある。
般若菩薩は梵語のprarṅāプラジューニャでバーリ語の音訳でpaṅṅāバンニャーから来ている、漢訳を慧と言い、和訳では見識・真実の智慧とされ覚りの母胎である、また般若菩薩は般若心経の根幹となる菩薩である、空海は著書・般若心経秘鍵に於いて般若経典600巻の要諦説を否定し般若菩薩の真言とする、即ち「大般若菩薩の大心真言三摩地法門なり」と言う。 但し般若菩薩は大日経には記述がなく院の中央は阿闍梨が曼荼羅を観想する場所である。
日本に於ける衆生信仰の三大尊に・観音菩薩・地蔵菩薩と共に不動明王があるが、「不動如来使」「待明使者」であり尊挌として視た場合明王は菩薩よりランクは低いが胎蔵界曼荼羅すなわち大日経では重要尊として扱われている。
6, 虚空蔵院―大日如来の救いが虚空の如く広い範囲に及ぶとされ、虚空蔵菩薩を中央に配し両端に大きく、右に向かって16面に煩悩を断ち切る108臂の金剛蔵王菩薩、左に27面の千手千眼観音の両菩薩の他、十波羅蜜菩薩10尊、菩薩10尊、飛天族6尊の等29尊を配し、全ての徳を生み出す働きを示す、大日経に於いては虚空無垢菩薩・虚空慧菩薩・清浄慧菩薩・行慧菩薩・安慧菩薩のみが記述されている、曼荼羅には他に檀波羅蜜菩薩・戒波羅蜜菩薩・忍辱波羅蜜菩薩・精進波羅蜜菩薩・禅波羅蜜菩薩などが描かれる、因みに十波羅蜜菩薩とは六波羅蜜に・方便・願・力・智を加えた尊像である。
*金剛蔵王菩薩と金剛蔵王権現に付いて、胎蔵界曼荼羅の虚空蔵院、右に向かって16面に煩悩を断ち切る108臂の“金剛蔵王菩薩”が配置されている、また密教の儀軌には22面もある様子である、要するに金剛蔵王菩薩は多面多臂の菩薩である、一方像容の相違が著しい修験道の本尊である“蔵王権現”は単面2臂であり権現の原型が菩薩説には疑問が多い様である。
7, 釈迦院―トラーナに囲まれた説法印の釈迦如来を中心に右に観自在菩薩・左に虚空蔵菩薩・左下に無能勝明王・右下に無能勝妃と実在したと言われる釈迦の十大弟子の内、
原図曼荼羅では遍智院 ・金剛手院 ・蓮華部院の上部に位置するが大日経や大日経疏では最外院に配置されており曼荼羅に於ける釈迦如来の存在感は著しく低い。
8,蘇悉地院 (スッ-シッデイ su-siddhi)
蘇悉地院が胎蔵曼荼羅に描かれている理由の一つに胎蔵界の図形として蘇悉地院(最外院を除く中央最下部)と対極の文殊院(最外院を除く中央最上部)とのバランスが言われている。因みに蘇悉地院は大日経に記述されていない。
9,文殊院―釈迦院の上、最下院の下に位置し、文殊師利菩薩を中心に真実の姿を示し智慧を象徴される菩薩・妙吉祥菩薩・光網菩薩・宝冠菩薩・無垢光菩薩・月光菩薩・妙音菩薩等に使者衆を含めて25尊で形成される、文殊院には小さく観音菩薩と普賢菩薩他2尊が描かれている、経典に於いては五尊のみ記述されている、文殊院も大日経具縁品には文殊菩薩を中心に・
10, 地蔵院―功徳を表す宝珠幢と如意宝珠を持つ地蔵菩薩を主尊に9尊を配し全ての救済を表しているが、経典には宝印手菩薩・宝手菩薩・地蔵菩薩・宝処菩薩・持地菩薩・堅個意菩薩の六尊である。
原図曼荼羅に於いては地蔵菩薩は日本に見られる僧形ではなく菩薩形で宝珠幢・如意宝珠を手にしている、描かれる九尊の内訳は上から
11、
原図曼荼羅の九尊の内訳は上から
12、
その他に・帝釈天・持国天、増長天(四天王)・梵天・婆藪仙など二十八部衆の一部等が置かれている。
因みに大日経具縁品には*東方 帝釈天、日天、大梵天、五浄居天。 *南方 羅刹王、火仙、閻魔王、七母、黒夜、死后。 *北方 なし(経疏には八大夜叉等) *西方 地神、弁財、
胎蔵曼荼羅の正式名”大悲胎蔵生曼荼羅”に関して「諸尊に三種の身あり、所謂 ・字と・印と・形像なり」 とある、すなわち・種子・三昧耶形・尊形である。
大日経すなわち胎蔵界曼荼羅の一解釈に三句の法門と言う概念にあると言われる。三句の法門とは「菩提心を因」と、「大悲を根」と、「方便を
「菩提心を因となし、非を根本となし、方便を究竟となす」。
注1、阿弥陀如来と無量寿如来を同尊として記述しているが異論もある。
注2、
注3、日本教 山本七平氏と米国人のジョセフ・ローラ・ユダヤ人のミーシャ・ホーレンスキー三人共同のイザヤ・ベンダソンと言う
別図参照 胎蔵界曼荼羅の主な尊像 1・大日如来(毘盧舎那仏)2・
左図は頭脳5で作図しました。
蓮華部院と金剛手院の尊名
蓮華部院(観音院) 右に中台八葉院 遍知院 持明院
参考 以下の蓮華部・金剛手院は東京都練馬区南田中4-15-24 慈雲山 曼荼羅寺 観蔵院 曼荼羅図典(大法輪閣)参照
被葉衣菩薩 |
蓮華部発生菩薩 |
|
白身観自在菩薩 |
薩埵婆大吉祥菩薩 |
|
豊財菩薩 |
耶輸陀羅菩薩 |
毘倶胝菩薩 |
水吉祥菩薩 |
大吉祥大明菩薩 |
|
大吉祥変菩薩 |
大吉祥明菩薩 |
大明白身菩薩 |
白吉祥変菩薩 |
寂留明菩薩 |
金剛手院 左に中大八葉院 遍知院 持明院
|
虚空無垢持金剛菩薩 |
金剛輪持菩薩 |
金剛 |
金剛牢持金剛菩薩 |
金剛説菩薩 |
金剛手持金剛菩薩 |
忿怒持金剛菩薩 |
|
虚空無辺超越菩薩 |
金剛牙菩薩 |
|
持金剛峰菩薩 |
金剛鎖菩薩 |
|
金剛拳菩薩 |
金剛持菩薩 |
持妙金剛菩薩 |
|
持金剛利菩薩 |
大輪金剛菩薩 |
除蓋障院 上から 悲愍慧菩薩 破悪趣菩薩 施無畏菩薩 賢護菩薩 除蓋障菩薩 慈発生菩薩 慈愍菩薩 拆諸熱悩菩薩 不思議慧菩薩(日光菩薩)
地蔵院 上から 除一切憂冥菩薩(除憂冥菩薩) 不空見菩薩 宝印手菩薩 宝光菩薩 地蔵菩薩 宝手菩薩 持地菩薩(堅意菩薩) 堅固深心菩薩 日光菩薩(除蓋障菩薩)
仏像案内 寺院案内
2005年12月23日除蓋障院尊像内訳 2009年2月15 7月10日その他の曼荼羅 2016年8月16日 10月2日 2017年3月21日 11月23日 2018年4月18日 10月3日 2019年9月13日最終 2020年7月8日 2022年5月6日加筆