恵果       746~805年              仏像案内    寺院案内    空海    高僧 

唐に於ける密教の完成者である、密教に於いては他の宗派と比較して相承系譜(そうじょうけいふ)が格段に重要視される、真言密教に於いては胎蔵系の「伝持八祖」と金剛界系の「付法八祖」(注1があるが、恵果は何れも第七祖に位置しており空海の師である、長安の東に位置する昭応の出身で俗姓は()氏とされる、八世紀初頭の善無畏以降130年あまり興隆した中国の中期密教の終盤を担った僧である、空海が訪れた時タイミングとして、禅宗で言う”啐啄同時(そったくどうじ)”ズバリ法統授受の嗣法(しほう)であった。 

幼少時に北宗禅(注2の大昭に師事するが、大昭に伴われ第六祖不空に弟子入りする。 
19歳で不空から灌頂を授かり20歳で具足戒を受ける、22歳頃不空から金剛頂経を授かり、善無畏の弟子である玄超(げんちょう)から胎蔵界即ち・大日経・蘇悉地経蘇悉地(そしつち)羯羅経(からきょう)(スシッデカラ/susiddhikraを受ける。 

玄宗皇帝の孫である代宗から徳宗、順宗の三皇帝の信任を受け青龍寺に東塔院を授かる、国家安寧や雨乞いの祈願を行い僧としての地位は高く780年には伝法阿闍梨となる、青龍寺は845年に武宗の会昌廃仏で消滅するが、翌年復旧する、しかし1086年に壊滅するが、近年日本からの援助で恵果・空海記念堂が建立されている。
恵果の教理としての功績は二律背反(独、Antinomie・アンチノミー)
、所謂両部は互いに稜線を挟んだ反対側の斜面にあるとか言われる両部の大経すなわち、ずばり密教の意識世界的な金剛頂経と顕教すなわち、大乗仏教の範疇にも入る物質界的な大日経を一元化した事にある。   

因みに空海に灌頂を与える以前に義明、惟上、義円など六名に与えている。


1真言八祖  「付法八祖」(金剛界系)と「伝持八祖」(胎蔵系)が言われている。 
八祖の本流として空海の広付法伝から金剛界系の「付法八祖」があり、大日如来から密教の説法を受けた金剛薩
が伝えたと言う伝承があり大日如来金剛薩 ・龍猛・龍智・金剛智・不空・恵果・空海が言われる。   「秘密曼荼羅教付法伝」(広付法伝)
またこれも空海の「略付法伝」からとされ胎蔵系の
「伝持八祖」は実在しない大日如来と金剛薩を省き、善無畏・一行を加えている、伝持八祖の制定は御室派が嚆矢で金剛頂経を意識した付法八祖に対して大日経と恵果の位置付けを加味して設けられた、善無畏・一行を加えた事は付法八祖の場合は金剛頂系を表しており中期密教すなわち金胎不二の観点から疑問を生じており大日経系を加えたと言われている
「伝持八祖」の名前と持物は通常諸説あるが 「龍猛」(龍樹)三鈷杵 ・「竜智」梵経 ・「金剛智」念珠 ・「不空」印形 ・「善無畏」印形 ・「一行」印形 ・「恵果」童子・「空海」五鈷杵とされ真言祖師とも言う、また「住持の八祖」とも言われる
中でも龍樹(竜猛)は大乗仏教の祖であり中国八宗の祖・日本八宗の祖とされている、著作に中論・一二門論・大智度論(注3)大乗二〇頌論などがある、ちなみに八祖の宗派は法相宗・抑舎宗 ・三論宗 ・成実宗 ・律宗・華厳宗・天台宗・真言宗を言う。  

真言八祖像は四国八十八所26番札所の「金剛頂寺」に於いて重文指定を受けて存在している、木造板彫りで彩色が施されている、ちなみに金剛頂寺は空海の創建と伝えられ嵯峨天皇と清和天皇の勅願所であった。   ●金剛頂寺の真言八祖像 龍樹88,6cm ・龍智86,4cm ・金剛智85,8cm ・不空87,4cm ・善無畏85,5cm ・一行87,4cm ・恵果87,2cm ・空海87,3cm 鎌倉時代。


2、北宗禅とは第六祖・慧能を祖とする宗派で日本に於ける禅宗系すなわち「臨済宗」「黄檗宗」「曹洞宗」は総て北宗禅である。
禅宗とは釈尊に帰れとされる宗派で第一祖は十大弟子の大迦葉とされ嗣法(しほう)即ち法統を受け継ぐ事を大義としている、菩提・達磨により禅宗は中国に於いて始る、達磨を初祖として慧可(えか)僧燦(そうさん)道信(どうしん)弘忍(ぐにん)慧能(えのう)衣鉢(えはつ)の継承が続いた系列の禅宗も第六祖をめぐり慧能と弘忍門下の兄弟子で弘忍の後継者を自任していた神秀(じんしゅう)が対立して南宗禅(神秀)と北宗禅(慧能)に分裂する、さらに慧能の弟子・行思(ぎょうし)懐譲(えじょう)から、曹洞宗・臨済宗に分裂して、さらに24派に分かれて発達する、主な宗派は五家(五門)と言われ「法眼(ほうげん)宗」「差仰(いぎょう)宗」「曹洞宗」「雲門宗」「臨済宗」が存在した。  


3、大智度論とは二万五千頌般若経に対する解説書である、中国大乗佛教に於ける各宗派は無論のこと、日本の八宗の依拠と成っている書籍である、マハー・プラジュニャーパーラミター・シャーストラ(Mahā-prajñāpāramitā-śāstra)と言い、大智度論を大辞林で引くと「大品(だいほん)般若経」の注釈書100巻。竜樹に著作と伝えられ鳩摩羅什訳。仏教の百科全書的な書。智度論、大論の記述がある、また月と指、即ち月を教える指の価値に関する比喩は著名である(尊者、また坐上に自在身を現ずること、満月輪の如し)とある。
「智度」とは波羅蜜の意訳である、六波羅蜜の内の智慧波羅蜜すなわち、「般若波羅蜜」(prajñāpāramitā)を言う、智とは智慧(般若)、度は渡と同意で彼岸に渡る事である、「摩訶般若波羅蜜経」「摩訶般若釈論」とも呼称される。
法楽寺様HPには大智度論とは「摩訶般若波羅蜜経」のサン梵語原典名Mahāprajñāpāramitā Sūtra「マハープラジュニャーパーラミター スートラ」語、摩訶(mahā)を「」、般若(prajñā)を「」、波羅蜜(pāramitā)を「度」としたもので、注釈書であるから「」としたとある。       法楽寺HP

 





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