梵語名 梵天は摩訶梵とも呼ばれ万物の根幹即ちブラフマー神(Brahmā)の音訳とされた、 ヒンドウ―教には三神一体(Trimurti・トリムールティ)と言う思想がありウパニシャッド(upaniṣad)には最高の原理と言われる、以下に述べる三最高神の三尊は同尊であると言う、三最高神とは・ブラフマー神(創造・Brahmā)、・ヴィシュヌ神(維持・Viṣṇu)、・シヴァ神(破壊・Śiva)を言う、すなわち梵天は三神一体思想の一尊である、因みにウパニシャッド(Upaniṣad )とは、梵語で奥義が記された即ち帝釈天と共にヴェーダの最重要部分を擬人化した書である。
梵すなわちブラフマン(Brahmān)は偏する事の無い究極である、また霊力等とも漢訳される、要するにバラモン(Brahmin)の神話を佛教がそのまま継承した尊格である、バラモン教では梵とは宇宙の根本原理お意味している、即ちBrahmānは固有名詞ではなくバラモンの祭事の祈祷に称えられた呪文がブラフマンである、因みに梵天の住む処は梵世と言い天界のうち色界内の初禅天である、因みに梵と言う漢字は佛と共に佛教
梵天は大自在天とも言い宇宙創造のクリエイター(Creator)
* ・ブラフマー(Brahmā 梵天)・バラモン(Brahmin 婆羅門)・ブラフマン(Brahmān 究極の存在)の使い分けに注意。
宇宙に於ける根本原理を人格化した姿が梵天であり、姿形としては顕教では二臂像であったが、密教では四臂像が多く造像されている、水鳥に乗り年齢を重ねた男尊でリグベーダ聖典(ṛgveda)(注8)、数珠、
バラモンに於いては宇宙のCreatorである梵天
創造主はユダヤ・キリスト・イスラムの世界では唯一絶対の神であるが仏教の世界での最高位は宇宙本体そのものとも言える大日如来すなわち摩訶毘廬舎那佛であり、佛教に取り込まれた異教神である梵天の地位は高くはない、配偶者は弁才天(Sarasvatī ・サラスバティ―)とされている。
インドに於いてもバラモン三大神の一神で、ヒンズー教に於いても宇宙の創造神として崇拝されたが現世利益・現世救済の思想がない為、大きな帰依を受ける事はすくなかった、しいて取り上げるなら鎮国利生・佛法守護であろう。
ヒンドゥー (Hindu) とはインド人が自称した名称ではない、イスラム等で呼称された名称である、梵語でインダス川対岸の人々、即ちインドを意味する、インド人の考えは自国で発生した宗教は総てヒンドゥー教であり佛教やジャイナ教等もヒンドゥー教の範疇に加えられている、バガヴァッドギーター(Bhagavad Gītā)と言うヒンドゥーの国民的聖典に依ればヴィシンヌ神は釈尊も含めて総ての尊格は自身からavatāra即ち化身である、としながら梵我一如(注6)
梵網経との関連は深い即ち、梵網とは「大梵天王の網羅と幢を観る----」と記述される様に梵天が救済に使う網を言い、網の数ほどの法があると言う。
帝釈天と同じく釈尊との関連は深く,ガンダーラ(Gāndharaḥ)
梵天には「
日本に請来された梵天像は姿形的には密教伝来以前の東大寺・法華堂の梵天像、伝日光菩薩像・唐招提寺金堂に代表される一面二臂で
又インドでも古くから佛教に取り込まれており日本でも平安時代から信仰が取り入れられ各時代を通じて像造は多く絵画を挙げると以下の様になる。
○西大寺の十二天画像
○京都国立博物館の十二天画像
○東寺の十二天(六曲屏風)
●神護持本など秀作は多い。
主な梵天像 表内は国宝 ●印国指定重文
寺 名 |
仕 様 |
時 代 |
東大寺(法華堂) |
立像 脱乾漆像 彩色 403,0 cm |
天平時代 |
唐招提寺(金堂) |
立像 木造彩色 186,2 cm |
平安時代 |
半跏 木造彩色 100,3 cm |
平安時代 |
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東大寺 (法華堂) |
立像 塑像彩色 切金文様 伝日光菩薩206,3cm 伝月光菩薩206,8cm 参考 |
天平時代 |
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東大寺法華堂,梵天の場合不空羂索観音の脇持として配置 |
●興福寺(国宝舘) 木造彩色 玉眼 171,5cm 鎌倉時代 (帝釈天と一対)
●法隆寺(奈良) 木造彩色 161,4cm 平安時代 (帝釈天と一対)
●滝山寺 木造彩色 105,0cm 鎌倉時代 運慶作 (帝釈天と共に観音菩薩の脇侍として 愛知県岡崎市滝町字山籠107)
●善水寺(滋賀) 木造彩色 161,7cm 平安時代 (帝釈天と一対)
●護国院 紀三井寺(和歌山市七番丁23番地) 木造彩色 162,5cm 平安時代 (帝釈天と一対)
真言 オン ハラジャ ハタエイ ソワカ
注1、バラモン三大神 ヴィシュヌ(維持・Viṣṇu ・シヴア(破壊・Śiva) ・ヴラフマン(梵天)(創造・Brahmā)を言う、三神一体(Trimurti・トリムールティ・同尊)と言う思想がある、すなわち梵天は三神一体思想の一尊である。
注2、
547話と数は多いが、場所は祇園精舎、舞台はパーラーナシーの都、内容はガーター(梵語・gāthā)と呼ばれる
日本に於いては玉虫厨子の両面に描かれている、a捨身飼虎図・飢えた虎の親子を救う為に前世の釈迦(摩訶薩た王子)が崖から飛び込んで虎の餌になる。b施身聞偈図・釈迦の修行中羅刹に変身した帝釈天が「諸行無常」と囁く、釈迦は羅刹に続偈の教授を願い出たところ「汝を食わせれば教える」と言う、承知した釈迦は聞いた偈(仏の言葉)を岩に刻んで身を投げたところ羅刹は帝釈天に戻って釈迦を空中で受け止めた、また象本生も著名である、水と食料を求めて森をさまよう難民達に象の屍骸がある水場を教え自分は先回りして、難民の食糧としての象の屍骸となる物語である。
また玉虫厨子には他に天王図・菩薩図・霊鷲山・草木図等が描かれている、他に天王図・菩薩図・霊鷲山・草木図等が描かれている。また玉虫厨子は飛鳥寺代の建築様式を正確に再現されており、太子一族の怨霊を鎮める願いを込めて制作された飛鳥芸術を代表する文化財である。
注3、梵天の源流は、梵を偶像化したもので仏教に於いては梵天と呼ぶ、「梵我一如」即ちインド古代のバラモン教最高経典の一つでリグ・ベーダ聖典の神々への賛歌の内にある。
無我説と有我説とに分かれており「梵我一如」は有我説である、梵(ブラフマンBrahman)と我(アートマンātman)と同一であると言う。
梵とは宇宙に於ける根本原理を言うが有我説に於いては我とは生命・霊魂・自己を言い肉体は滅び消滅しても我は不滅であると言う、ベーダ聖典を典拠とするバラモン哲学は梵我一如を正統するが、無我説を言う仏教や唯物論者は縁起説から始まり「諸行無常」を言い梵我一如を否定する。
注4、十二天 仏法の護法善神を言う、 ・伊舎那天(東北) ・帝釈天(東) ・火天(東南) ・焔魔天(南) ・羅刹天(西南) ・水天(西) ・風天(西北) ・毘沙門天(北) ・梵天(天上) ・地天(地中) ・日天(太陽) ・月天(月界)とあり、十二の方角を守護する役割を担う。
十二天とは、八方(東西南北の四方と東北・東南・西北・西南)を護る八方天に、天地の二天と日月の二天を加えて十二天としたものである
十二天を描いた国宝作品を挙げれば ・西大寺 絹本著色 掛幅装 十二幅 平均160×134,5㎝ 平安時代 ・東寺 絹本著色 六曲屏風 各130,0×42,1㎝ 鎌倉時代 ・京都国立博物館 絹本著色 掛幅装 各十二幅144,0×127,0㎝ 平安時代 が有る。
注5、バラモン(brāhmaṇa) BC2000〜1500年頃インドに移り住んだアーリア人が現住民のドラピタ人等を制圧し興した宗教で、インドに於ける階級制度(カースト)の最高位にあり梵語のbrāhmalaの音訳で中国では婆羅門と記述された。
因みにヴェーダ聖典を読むことを許されている階層は婆羅門(brāhmaṇa)だけに限られる様である。
カーストとはラテン語の castusが語源でありBC10世紀以前からインドに存在する身分制度で「家柄・血統」と訳され、一族のすべては生涯変更される事はない、但しインドに於いてはバルナ(varla)と呼ばれている、バルナとは本来は色彩を意味しているが法的には建前として存在しない事になっている。
釈迦はカーストについては梵我一如(永遠の至福・万物の絶対永遠性)と共に否定したが、佛教の影響力の衰えと、ヒンヅー教の興隆により復活した、20世紀後半ヒンヅーから佛教徒に改宗したアンベードカル法相により憲法に於いてアチュート廃止が条文化されたが現在も確実に生きている、アチュートが轢逃事故の被害や殺害されてもマスコミは扱わないケースが多い、また放火、殺害されても主犯は無罪とか軽微な罰金で釈放されている。
佛教はインドで生まれ諸国に広まったが、カーストの厚い壁に阻まれてインドでは消滅に近い状態まで衰えた、しかしアンベードカル哲学に学んだ佐々井秀嶺に率いられたアチュートを中心に広まる可能性を秘めている。
カースト ラテン語の castusが語源でありBC10世紀以前からインドに存在する身分制度で「家柄・血統」と訳され、一族のすべては生涯変更される事はない。
インドに於いてはカーストと輪廻転生は車の両輪でありインド思想社会を構成していたと言える、どのカーストに生を受けるかは前世・前々世からの業により決められておりキリスト教の様な予定説は存在しない。
釈迦はカーストについては梵我一如(永遠の至福・万物の絶対永遠性)と共に否定したが、佛教の影響力の衰えと、ヒンヅー教の興隆により復活し現在にも生きている。
ヴァルナ・ジャーティ制(varna)は基本的には四階級と言われるが、事実上は五階級に分類され、さらに夫々が細かく分類される、インドに移り住んだ遊牧民であるアーリア人が1~3、を占め4、をドラピタなどの先住民が位置している。
1、 ブラーフマナ・バラモン(婆羅門)司祭と訳され聖職に付き式典の祭主を勤める。 brāhmala 婆羅門
2、 クシャトリアと呼ばれ王族・貴族・武士などを指す。 ksatriya 刹帝利
3、 ビアイシャと言い平民を指す。 viaśya 吠舎
4、 シュードラと言い賎民を言い卑しいとされる職業に就く。 Śūdra 旃陀羅
5、 アチュートとかダリット(Dalit)と言いヴァルナを持たないカーストの枠内に入れない不可蝕賎民を言う、梵語でCaṇḍ āla,とも言い漢字で旃陀羅と書く、英語で(Broken People)、アンタッチャブル(Untouchable)とも言う。
日蓮は己の出自を旃陀羅と言った。
カースト制度に対するインド人の執着は法華経にも現れている、即ち十大弟子の一人である優波離の出自がシュードラ即ち奴隷階層である為に名前の記述がない。
十大弟子の出自を挙げると以下のようになる、 *バラモン 舎利弗、摩訶目犍連、摩訶迦葉、摩訶迦旃延、富楼那弥多羅尼子 *クシャトリア 阿難、羅睺羅、阿那律 *ヴァイシャ 須菩提 *シュードラ 優波離。
ヒンドゥー教徒でありながら寺院や公共施設に入る事を許されない、インド人口の25%近い数を占めると言う、梵語でCaṇḍ āla,と言い漢字で旃陀羅と書く、日蓮は出自を旃陀羅と言った。
この司祭階層の主宰する祭式をバラモン教と呼ばれたが、佛教やジャナ教が台頭すると衰えを見せるがカースト制度は維持された。西暦2〜3世紀頃非アーリア的な神々や信仰形態を取り入れ大衆の支持を得ることに成功し宗教的融合を果たしてヒンドゥー教の成立をみた。当初バラモンは第4バルナのシュードラを差別・除外していたが、農民大衆をシュードラとみる傾向が一般化した為にシュードラ差別を改めて彼らのために祭式を挙行するようになった。
バラモンと佛教の関係 釈迦如来は梵我一如の宇宙哲学を否定し無常、人間的論理を駆使して佛教を成立させるが後に興った大乗思想はバラモン思想を華厳等の教派として一体化する、但しヒンズー教に圧されて起こした密教は梵我一如そのもである。
インドに於いてはカーストと輪廻転生は車の両輪でありインド思想社会を構成していたと言える、どのカーストに生を受けるかは前世・前々世からの業により決められておりキリスト教の様な予定説は存在しない。
注6、梵我一如とはブラフマンbrahman、即ち「宇宙を支配する原理」とĀtman自分、すなわち、個人を支配する原理を同一視し、永遠の至福を得ると言うバラモン思想(不二一元論 advaita)を言う、また梵我一如はウパニシャッド(Upaniṣad・奥義書)とも言い、インド古代のバラモン教最高経典であるリグ・ヴェーダ聖典(ṛgveda)に於ける神々への賛歌の内にある。
注7、梵天を扱った経典に偽経であるが、大梵天王門仏決疑経がある、内には大迦葉を崇めている著名な寓話がある、霊鷲山に於いて釈尊が説法中に華を捻った趣旨を只一人理解した、即ち拈華微笑したとして「正法眼蔵」「涅槃妙心」「実相無相」「微妙法門」「不立文字」「教外別伝」の真理を授けられたとされる、但しこの寓話はインドやチベット等では語られていない、因みに拈華微笑の物語は偽経である「大梵天王門仏決疑経」の記述がある。
注8、ヴェーダ聖典 Rgveda BC2000〜500年ころのインドに於ける最古の経典の一つでバラモン教に於ける神々を讃える賛歌を主体とする経典である、成立の古い順に リグ・ヴェーダ、 サーマ・ヴェーダsāmaveda、 ヤジュル・ヴェーダyajurveda、 アタルヴァ・ヴェーダatharvedaがある、因みにヴェーダとは漢訳経典では明呪とか智識と訳されている、表現を変えれば、「神々への賛歌、祭祀の集合」したものである。
リグとは讃歌を意味しヴェーダはバラモン聖典をさす、゙サンヒター Samhiā 讃歌 ・呪文 ・祭詞を集成した本集、 ブラーフマナ Brāhmanā サンヒター補助部門、 当初は口伝で伝承されたが文字の発達に伴い文書化された、また中国では「梨倶吠陀」と記述される、サンヒターとはヴェーダの本体部分を言う(ブラーフマナ、アーラニヤカ、ウパニシャッドは注釈・解説、思想哲学部分を言う)。
Rgveda
BC2000~500年ころのインドに於ける最古の経典の一つでバラモン教に於ける神々を讃える賛歌を主体とする経典である、 リグ・ヴェーダ、 サーマ・ヴェーダsāmaveda、 ヤジュル・ヴェーダyajurveda、 アタルヴァ・ヴェーダatharvedaがある、因みにヴェーダとは漢訳経典では明呪とか智識と訳されている、表現を変えれば、「神々への賛歌、祭祀の集合」したものである。
リグとは讃歌を意味しヴェーダはバラモン聖典をさす、
*゙サンヒター Samhiā 讃歌 ・呪文 ・祭詞を集成した本集、
*゙ブラーフマナ Brāhmanā サンヒター補助部門、 当初は口伝で伝承されたが文字の発達に伴い文書化された、また中国では「梨倶吠陀」と記述される。
*゙アーラニヤカ Aranyaka 森林書 呪文、祭義の解説
ヴェーダ聖典に於いて最も熟成したのが、
*゙ウパニシャッド(梵語 奥義書)である、その思想は汎神論の発端を示している、梵我一如 (中村始仏教入門 春秋社)汎神論とはブリタニカ国際大百科事典に依れば神と存在全体 (宇宙、世界、自然) とを同一視する思想体系。両者を一元的に理解し、両者の質的対立を認めない点で有神論(pantheism)とは異なる。歴史的諸宗教において、その神秘的側面を理論化する際に表われる体系化の一つの型である、たんてきに言えば総ての存在は神である、神と世界とは一体と観る宗教観、思想観と言える。
ヴェーダ聖典を読むことを許されている階層は婆羅門(brāhmaṇa)だけに限られる様である。
最終加筆日2004年6月29日 2010年2月19日 2013年6月4日 2016年12月1日 2017年5月20日 5月27日 2018年5月11日 2020年5月23日 11月26日 2021年10月28日 2022年7月15日補足