如意輪観音

                                      仏像案内     寺院案内    菩薩 

梵語名は明確ではないが、Cintāmaicakra(チンターマニ チャクラ) ,ソグド語注6からの音訳を有力な仮説として記述する、チンターマニとは自在に輪転の意訳で・自在に輪転の意訳で・如意宝珠のパワーを示す、チャクラ(輪)とは輪宝とも訳される,宝輪・宝珠を自由に駆使すると言う、如意宝珠と宝輪のパワーで一切衆生の苦・願いを解決すると言う、漢訳では「()(ごと)く願いを叶える」菩薩を意味する、因みに如意輪とは「如意(にょい)宝珠(ほうじゅ)宝輪(ほうりん)」の略である。
灌頂(かんじょう)号すなわち密号は持法金剛・与願金剛とされている、インドでは如意輪観音に似た遊戯坐(ゆうげざ)の変化観音
(獅子吼観音)は信仰されたが確定される尊像は無く、敦煌周辺が嚆矢かもしれない、因みにソグド語からの経典名は実又難陀(じっしゃなんだ)漢訳「観世音菩薩秘密蔵如意輪陀羅尼経」と言う。 (caklavarti cintā mai チャクラヴァルティー チンターマニ
「如意輪陀羅尼経」を主に典拠としており一切の衆生に対して救済するという、如意とは如意宝珠の事で輪は輪宝である、如意宝珠を中央に持ち功徳
(財宝・福徳・知恵)を施し人々を六道からの苦を救い輪宝(手裏剣の様な輪)を使い煩悩を打破しようとする物質・精神面に功徳を与える菩薩である、名前の由来であるあらゆる願いが叶う珠、すなわち如意宝珠摩尼(まに)宝珠)と煩悩を打破する宝輪の他に蓮華・数珠を複数の手に持ち膝を崩し足の裏を重ねた輪王座を採る、輪宝の効用に付いては「転輪聖王獅子吼経」 cakkavattisiihanaada-suttantaチャッカバアッライシーハナーダスカンダ)に記述がある、これは古代インドに於ける最高の君主と言われた転輪聖王すなわち転輪王をイメージしている。

転輪聖王獅子吼経の獅子吼(ししく)観音とはヒンドゥー教Hinduの三大神の一尊であるシヴァŚiva神の変化身が仏教で観音菩薩に採用された尊格で梵語でシンハナーダ(sihanāda)と言い獅子の様に吠えるという、その他シヴァ神の変化及び同尊と言われる菩薩に青頸(しょうきょう)観音があり、ヴァースキ( Vāsuki)と言う龍王が宇宙を破壊しようとして充満させたハーラーハラ(Halāhala)と言う猛毒を飲み干して破壊を免れたと言う、青頸観音は猛毒の為に頸が青く変色したと言う。
因みに関連経典を挙げると
・「観世音菩薩秘密蔵如意輪陀羅尼神呪経」実又難陀(じっしゃなんだ)Śikṣānanda訳 ・「観世音菩薩如意摩尼陀羅尼経」宝思惟(ほうしゆい) ・「如意輪陀羅尼経」菩提流支(ぼだいるし)bodhiruci訳 ・「仏説観自在菩薩如意心陀羅尼経」義浄訳 ・「観自在菩薩如意輪念誦儀軌」不空訳・「観世音菩薩秘密蔵(ひみつぞう)如意輪陀羅尼神呪経(じんじゅきょう)」等々がある。  

姿形的には多くの形が儀軌に説かれており後述するが二臂・四臂・六臂・十臂・十二臂など異像も多い、日本では八世紀頃に広まったとされるが、胎蔵曼荼羅の観音院のの尊容が多い。
如意輪観音の請来は天平以降、即ち聖武天皇の看病禅師である慈訓や安寛が手にした「如意輪陀羅尼神呪経」(漢訳は八世紀初頭i)が嚆矢と考えられるが、如意輪観音は山林修行を中心とする菩薩であった様で葛城山の役小角道鏡、更に醍醐山の聖宝などの信仰は篤かった、因みに真言僧の登竜門小野流の四度加行に於ける如意輪観音の重要度は大きい。 

「六角堂夢告」であるが頂法寺には親鸞が夢告を受けたと言う六角堂の本尊は如意輪観音で厳重秘仏にされている、但し六角堂夢告の話は西山浄土宗の祖である證空も「西山上人縁起」、西照寺本「聖徳太子夢中顕現曼荼羅」等に関係があり、法然一門で知られていた様である。
如意輪観音は二臂像と六臂像が普遍的であるが二臂像は如意輪観音と確定し難い尊像が多く、数的にも空海が請来した密教の六臂像が多い、冠には自在王の化仏を付け、通常の六臂相は六道の中で苦しむ衆生を救済する為ともいあれる、具体的には。
*右臂
右第一思惟(しゆい)相 (衆生の救済法を思案)
右第二如意宝珠(にょいほうじゅ) (衆生の願を叶える)   
右第三・数珠、(畜生道以下を救済)
*左臂 
第一施無畏(せむい)印 (台座を支える)
第二・蓮華 (浄化)
第三・輪宝 (煩悩を砕く)を所持している。      

 
ただしインドに於いては衆生の願いを成就させる事を如意輪と言い、「自在に輪転」と理解されている事から輪宝は所持しない、重ねて言えば思惟相と如意宝珠が如意輪観音の必須アイテムと言える。
東大寺
大仏殿の毘盧舎那佛の脇持として造像されたと言い奈良時代に造像されたと言われるが、一般に如意輪観音は平安時代以降に造像され女人救済と共に密教が興隆し六臂像が主流となる、胎蔵曼荼羅の観音院に在る様に密教系の寺院に多く遺品が残る、六臂像の如意輪観音は醍醐寺室生寺・神咒寺等に秀作が揃うが代表作は観心寺と言えよう、観心寺の場合は六臂の内一臂を立膝の上に置き頬に充てる姿形で曼荼羅と同形である、因みに観心寺如意輪観音のモデルは嵯峨天皇の皇后・橘嘉智子すなわち檀林皇后と言われている、また神咒寺のモデルは淳和妃の真井御前
(如意尼)とか言われる。
奈良時代頃は一面二臂の半跏思惟像を如意輪観音とする信仰があったとも言われ・中宮寺 ・宝菩提院
(京都市西京区大原野)の菩薩半跏像は寺伝よれば如意輪観音とされている、如意輪観音のご利益の特徴は煩悩の打破にあり、特に中宮寺の菩薩像は亀井勝一郎氏の著作・大和古寺風物詩の言う傷心の心を癒す仏である、仏像には信仰者に対する心が内包されており如意輪観音が相応しく映る、閑話休題この尊像には「悉達多太子siddhãrtha」略して悉達(しった)太子、即ち釈尊の出家以前の姿との説もある
両部の大経には説かれていないが「観自在菩薩如意輪瑜伽」に像容の記述がある、密号を「持宝金剛」と言い如意輪観音は密教色の強い菩薩である、密号とは密教に於ける結縁灌頂に使用される呼称を言い金剛号・灌頂号等とも言われている、因みに瑜伽とは梵語saṃskṛtaでyoga(ヨガ)の音訳である、原義としては“相応”、“結合”を意味するがヨーガとの解釈が適当と考えられる
真言宗
小野流・三宝院流などに於いては特に重要な菩薩で
阿闍梨(入壇)に成る為の伝法灌頂を受ける際に修行者が最初に出会う菩薩である、真言僧が得度した後に伝法灌頂に入壇(にゅうだん)する為には四度加行(しどけぎょう)が必須科目である、この修行は俗界と離れた厳しい修行を言い「四度加行(しどけぎょう)」と呼ばれ四段階があり1、十八道法 2、金剛界法 3、胎蔵界法 4、不動護摩法の修法を言う、四度加行の前行である礼拝行の本尊が如意輪観音である、四度加行は広沢流・中院流に於いては大日如来を本尊とされている。
四度加行の潅頂は両部の大経、双方に説かれており金剛界法と胎蔵法の潅頂儀礼を受ける必要がある。
阿闍梨(あじゃり)とは阿舎梨・阿闍梨耶とも書き、梵語のアーチャリー(ācāya)
の音訳で、本来の意味は行を行う事を知る人を言うが、意訳をすれば師・規範となる、教団の高位の指導者を指し空海も唐に於いて師の
阿闍梨恵果より伝法阿闍梨位灌頂を受けている。
灌頂には僧侶以外の受ける結縁灌頂(けちえんかんじょう)や密教の修行を目指す人の弟子灌頂(受明灌頂)等がある。
阿闍梨の種類は特に選ばれた大阿闍梨、法を指導する教授阿闍梨、灌頂を受けた伝法阿闍梨、高貴な身分の者がなる一身阿闍梨、勅命による七高山阿闍梨などが在る。

また如意輪観音は六観音の一尊である、六観音とは浄土信仰と共に中国で生まれたもので大悲観音(千手観音)など六尊を拝んで輪廻から抜け出す手段と考えられた、六観音には救済に赴く六道に夫々の担当があり以下のようになる、但し輪廻の本家であるヒンズー教世界に於いては天上界、人間界、畜生道、地獄道の四界で示される。
・地獄道――聖観音菩薩 
・餓鬼道――千手観音菩薩 
・畜生道――馬頭観音菩薩 
・修羅道――十一面観音菩薩 
・人間界――准胝観音菩薩 
・天上界――如意輪観音菩薩とされている。
天台宗
では准胝観音を仏
(仏眼仏母)に分類している為に六観音から除外して不空羂索観音を当てている、中国で信仰された六観音とは天台宗の「摩訶止観」から来ており大悲観音・大慈観音・師子無畏観音・大光普照観音・天人丈夫観音・大梵深遠観音を言われる。
1997
年の時点で国宝重文指定の像は34尊あり 坐像22尊 ・半跏像12尊で分布状態は 奈良県10尊 ・京都府7尊 ・大阪府5尊 ・滋賀県4尊となる。 

三重県四日市市六呂見町に観音寺と言う浄土宗の寺がある、一瞬孔雀明王と錯覚しそうな像がある、寺伝に如意輪観音(29.8cm木造素地、彫眼)と言う金色で四足八頭と言う怪鳥に乗る奇像が安置されている、また怪鳥に付いては神武東征を導いた八咫烏(やたがらす)で跨るのは如意輪観音ではなく天照大神との伝承もある。

*「観世音菩薩秘密蔵如意輪陀羅尼経」 実又難陀(じっしゃなんだ)漢訳、 *「観世音菩薩如意摩尼陀羅尼経」寶思惟(ほうしゆい)漢訳、 *「如意輪陀羅尼経」菩提流志(ぼだいるし)漢訳、*「仏説観自在菩薩如意心陀羅尼呪経」義浄訳、 *「観自在菩薩如意輪念誦儀軌」不空訳、等々がある。   

真言 オン バラダ ハンドメイ   


注1、 如意宝珠 桃の様な形の珠であらゆる願いをかなえてくれる、                              


注2、 輪宝 丸い手裏剣で煩悩などを打ち砕く、また古代インドに於ける伝説上の聖王とされる転輪聖王のシンボルとの説もあり、仏像崇拝が起こる以前に足跡などと共に崇拝の対象物であった、また如意輪観音の別称に「大梵深遠観音菩薩」等と言う呼称が見られる。

注3、転輪聖王とは梵語ではr
ājācakravarti  輪を用いる王の意味で古代からインドに於ける伝説の大王である、インドを制圧に対して天よりcakra(チャクラ)すなわち輪宝を感得したと言いヒンズー教・ジャイナ教とも共通の英雄とされている、輪宝は武器の一種とも戦車の車輪とも言われる。   


注4、 下表の内、中宮寺・宝菩提院は寺伝が如意輪観音の為同型の広隆寺弥勒像と共に重複記載。 


5、 観心寺室生寺神咒寺(かんのうじ)(西宮市甲山(かぶとやま)町)の像を日本三如意輪観音とされる、六臂に付いては「観自在如意輪菩薩瑜伽法要大正蔵」には六臂は六道及び六観音菩薩を顕すと言う、海外の絵画でボストン美術館所蔵の如意輪観音 一面六臂(絹本著色 98.8cm 44.7cm 12世紀)が著名である。


注6、 ソグド語、4世紀頃中期イラン付近で使われたが現在は死語。 



主な如意輪観音像    ○印国宝   ●印国指定重文 
観心寺   木造彩色 坐像六臂像 108,8cm 金堂 日本三如意輪観音    平安時代  
宝菩提院   木造   半跏二臂像 137,2cm   寺伝如意輪   平安時代 
中宮寺   
木造   半跏二臂像 87,0cm    寺伝如意輪    飛鳥時代  
○広隆寺     木造   半跏二臂像 84,2cm     弥勒像   隋時代  参考
広隆寺     木造   半跏二臂像 66,4cm    泣き弥勒   白鳳時代  参考 
室生寺 坐像 木造漆箔 78,7cm 藤原時代  灌頂堂   日本三如意輪観音の一尊
●神咒寺 坐像 木造彩色 97.8㎝  藤原時代        日本三如意輪観音の一尊   兵庫県西宮市甲山町25-1  ℡ 0798-72-1172     

石山寺 木造漆箔 木造漆箔293,9cm(秘仏、33年に一度開扉)藤原時代 

石山寺 半跏 木造漆箔 40,3cm 藤原時代  

東大寺 坐像  木造漆箔 木造 漆箔 722,5cm  江戸時代   大仏殿
東大寺 半跏像 銅像鍍金  平安時代 

園城寺 木造漆箔 91,5cm 藤原時代 

橘 寺 木造漆箔 170,0cm 平安時代      

●如意輪寺(和歌山) 木造漆箔金泥 55,4cm 平安時代 

●如意輪寺(徳島) 木造 漆箔 彩色 玉眼 105,1cm 鎌倉時代

●斑鳩寺(兵庫) 木造漆箔 247,2cm 室町時代

岡 寺 坐像 彩色 塑像 458,1cm  平安時代  日本最大の塑像であるが補修箇所が多く彩色も脱落、当初は半跏像であった。 

岡 寺 半跏 銅像 鍍金 31.2cm  奈良時代

広隆寺 半跏 木造漆箔 71,5cm 平安時代

法隆寺(聖霊院) 坐像 木造漆箔 126,3cm 藤原時代 

法隆寺 坐像 木造 17,9cm 唐時代

橘寺 坐像 木造漆箔 藤原時代

醍醐寺 坐像 木造漆箔  49,6cm 平安時代

大報恩寺(千本釈迦堂)木造 立像 96.0cm 六観音の内  肥後別当常慶作  

室生寺(灌頂堂)坐像 木造漆箔 78,7cm 藤原時代 

●観音堂(埼玉県越生町如意600)木造 81.cm 半跏像  平安時代 

醍醐寺(清滝堂)坐像 木造漆箔 49,6cm 藤原時代 

●百済寺(滋賀県愛知郡愛東村) 銅像 23.4cm 半跏像  菩薩半跏思惟像 
●平等寺(京都 因幡(いなば)堂) 坐像 木造漆箔 玉眼  81.2cm  鎌倉時代   京都市下京区烏丸松原上ル東入ル因幡堂町728

●透玄寺(京都) 木造漆箔 玉眼 99,3cm 鎌倉時代          京都市東山区茶屋町527

観心寺 木造彩色 57,8cm 平安時代

●奈良国立博物館 木造 94,9cm 平安時代  
●法蔵寺(滋賀) 絹本着色 1幅 123,9cm×91,7cm 鎌倉時代
●松尾寺(京都) 絹本着色 1幅 102.5cm×54.3cm 鎌倉時代   一山一寧 賛


                              

                       最勝院の如意輪観音像 (勢山社)                       

                              
   
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最終加筆日 2004628日   200526日  62日  2006910日四度加行 20081215日 2017年11月20日 2018年9月29日 10月9日加筆

     

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